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09-22



「話は逸れたけどよ。俺サマとケイは変なところで共通点がある。そりゃ向こうに仲の良過ぎたダチがいたってこと。俺サマ等は喧嘩別れで事が済んでいるけどな……ん? ケイ、その顔は何か質問がある顔だな? いいぜ、何でも答えてやるよ。今だけのサービスだ」


今のワタルさんはほんっとにエスパーだよな。
ことごとく俺の心を読んでくる。敵わない。それとも俺が顔に出やすいのかな?

間を置いて、おずおず口を開く。
不謹慎かもしれないけど、どうしても彼に聞きたいことがある。


「ワタルさんは、どうやって魚住のことを諦めました? 親友なら、例え喧嘩別れしても……そう簡単には割り切れない節があると思います。俺も立場上、仲の良かった奴と絶交宣言しました。そろそろ踏ん切り付けようと思うんですけど、なかなか……」

「踏ん切り、ねぇ」


ワタルさんはまた一つ紫煙を吐き出した。
白濁した二酸化炭素の塊は、スーッと空気中に消えていく。


「それはそれ、これはこれ。俺サマはそうやって割り切った。確かに親友だったけど、分裂事件で選んだ道は別々。大喧嘩もした。しかも俺サマ達は今、お互いに潰し合いたいと思っているからな。ケイとはちと状況が違う。それに親友だったからこそ全力で張り合いと思う手前がいるんだ」

「親友だったからこそ?」

 
どういう意味だと瞬きする俺に、「そのまんまだよ」ワタルさんがあどけなく一笑する。


「アキラをいっちゃん理解していたのは俺サマだと思っている。そして俺サマを理解していたのはきっとあいつだろう。だったら俺サマがアキラをこの手でやる。他の奴になんざ譲らせねぇ。潰した後はどーすっかなぁ……そこは考えてねぇけど、俺サマは俺サマなりのケジメを見つけた。あいつは俺サマが叩き潰す。親友に戻りたいかと聞かれたら、どっかで戻りたい自分がいるかもしんねぇな。居心地良かったのも事実だったし」


ワタルさんは煙草の灰を地面に落として淡々と語る。

そして黙然と聞いていた俺の肩に腕を置いて、「俺サマと同じにならなくてもいいさ」おどけ口調で助言してくれた。


「ケイなりのケジメを探せばいい。誰も咎められねぇよ、ケイが決めた道でケジメなんだからな。仮にケイがダチの友情を捨て切れなくて向こうのチームに行ったとしても、それはそれでケイなりのケジメ。手前が納得するなら仕方がねぇ。自分の納得する道が一番だと俺サマは思う。焦って答え出しても余計に落ち込むだけだぜ?」


「ワタルさん……」

「仕方ねぇから、何かあったらケイの話を聞いてやるさ。ヤな共通点を持っちまった俺サマ等だからこそ、話せるってこと、あンだろ?」


ウィンクをしてくるワタルさんは相変わらず俺サマ口調だけど、何だかすっごく男前だった。 

こんな風に言ってくれるなんて思いもしなかったんだ。

答えを導き出せたわけじゃないし、ケジメの付け方も分からないままだけど、でも、自分の納得する道を探せと言われて……救われた気がした。

この道しかないと思い込んでたからこそ、ワタルさんに救われた気がしたんだ。


――そっか、納得するまで探せばいいんだ。 


自分が納得する道……それが間違いだとしても探していけばいいんだ。俺が納得するまで。

じゃあ納得する道を見つけるまで、俺は健太とどう接していこうか。絶交宣言をしたけれど、これから俺、健太とどう向き合っていこうか。

結局これは簡単に答えが出るわけじゃない。時間を掛けていこう。


俺はきっと焦っていたんだろうな。

健太が向こうのチームにいたから、色々とテンパっちまって、自分の気持ちに納得する間もなく相手に押されるがまま絶交宣言を交わしちまった。

落ち込む状況を余計に悪化させちまったんだ。視野が狭く狭くなっていたんだ。


やめた、もう焦るのやめた。答えを無理やり出すのはやめた。


今、俺の気持ちから言えることは二つ。

俺も健太も譲れない居場所があるってこと。
そして俺が健太を未だに友達だと思っていること。

ワタルさんは魚住を自分の手で倒すってケジメを出したように、俺もケジメを付けるためにゆっくりと答えを出していこう。

「ワタルさん、ありがとうございます。気持ちがすっごく楽になりました」

今なら嘘偽りなく笑える。心がすげぇ軽くなった。

今の男前ワタルさんなら信者になってもいいな。

ほんっと男前だよ、ワタルさん。
俺が女だったら惚れちまうかもしれない!

あ、一番は利二だけどな。あいつの寛大な心といったら感涙もんだぜ、マジで。



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