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08-02



◇ ◇ ◇



「――分かっていたこととは言えピンチだな、俺等。全滅に近いじゃねえかよ」


重々しく話を切り出してきたのはチームリーダーのヨウ。 

「ほんとにな……」

頷くシズの口調は重い。
珍しく困ったように笑っているワタルさんも参ったと弱音を吐いているし、弥生にいたっては目の前のピンチにダンマリになっていた。

今日も今日とて無理やりたむろ場に連行されたタコ沢なんて開き直って腕を組んでいる始末だ。

いつにも増して、たむろ場にしているスーパー付近の倉庫裏の空気が重いのは俺の気のせいじゃないだろう。

「だ、大丈夫ですよ!」

空気を蹴散らすようにモトが明るく言うけれど、空気はどんより重たいまんま。

散らそうとした湿気た空気は散ることなく、沈黙に形を変えてしまった。

大半が暗い顔をしている一方で、俺、ココロ、ハジメ、響子さん。そして中学生組はアイコンタクトを取っていた。


うーんと、ピンチっちゃピンチだな。

何がピンチかって? あ、先に言っておくけど俺はピンチじゃねえよ? ギリギリ、地味友のおかげでギッリギリ免れたんだ。

何に免れたか? そりゃー……。

ほら、俺達さ。
周囲から不良同士争っているどうたらこうたら言われたり、地味が荒川の舎弟だとかこうとか言われたり、色んなことが言われているんだけど、そんなことを言われる前に俺達学生なんだわ。高校生なんだわ。

学生ということは当然、定期的にやってくるアレが待っているわけで……。


「はぁーあ。チームの半数以上が追試って……有り得ねぇだろ。このままじゃ留年しちまうぞ、俺等」


ヨウは大きく溜息をついた。

そう、俺等のチームは追試というピンチを迎えているんだ。

話は遡ること一週間前。
各々の高校で定期試験があったんだけど、見事にチームメンバーは撃沈した。

常日頃からヨウ達とサボっている俺は、母さんに事が知れたら大変だと試験期間に入るや否や地味友に勉強を教えてもらっていた。
放課後や昼休みはヨウ達と一緒だから授業の合間だとか、電話で範囲教えてもらったりとか。


結果、数学と英語は赤点超ギリギリだったけど、寝不足というリスクまで背負って勉強したおかげで他の教科は平均並みだったんだ。


いやさ、勉強しようと教科書を開いたはいいんだけど、サーッパリ分からなくて。

このままだとガチで留年しちまう! 本気で危機感を感じた俺は地味友に助けてくれと泣きついたんだ。

そしたら皆、懇切丁寧に教えてくれた上にノートまで見せてくれた。

透なんて俺が泣きつくことを予測していたみたいで、事前にノートをコピーして渡してくれた。どこら辺が出るのかもちゃーんと書いててくれた。

その時の感動といったらさぁ! 感涙だぜ感涙!


勉強を教えてもらっている合間あいまに、俺の中に溜まっていた不良に対する恐怖話や愚痴を地味友はしっかりと聞いてくれた。

光喜は俺の不運話を聞いて、「でも田山。強くなっているよな」それって凄いことだと心の底から褒めてくれたし。

透からは「何かあったら僕も協力するよ、本当だよ、圭太くんは僕を助けてくれたんだから」頼もしい言葉を贈ってくれたし。

利二なんて「できる限りの手助けするし情報も提供するから」いつでも頼って来いって言ってくれたし!


嗚呼、持つべきものは地味友だよな!

ありがとう、利二、光喜、透。超絶愛しているぜ!


と、いうことで、俺はめでたく追試をパスできたんだけど、残念なことに不良の大半は撃沈。泣く泣く追試を受けることになった。




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