08-03
だけど追試期間中、チームは喧嘩関連のことが何もできなくなる。
追試もパスできなかったら進路にまで影響が反映される。
最悪、留年になるかもしれない。それだけならまだしも、保護者呼び出しは免れないだろう。
元々ヨウ達は素行が悪い。
学年主任クラスの教師と担任と保護者と自分の四人で面談しないといけなくなる可能性もある。不良達にとって耐え難い苦痛だろう。
もはや日賀野達どころじゃなくなる。それはとてもとても不味いと、こうして緊急集会を開いている。
……まあ、簡単に言えば普段から授業をサボった俺達が悪い。ツケが回ってきたんだ。
ヨウは現状に唸り声を上げた。
「ヤマトチームを潰す前に大問題発生だな。ヤマトどころじゃねえ。まさか、こういった問題が出てくるなんざ……迂闊だった」
「バーカ。勉強してねぇアンタ等が悪いんだろうが。うちは事前に言っておいた筈だぜ? 試験前になったら勉強をしとけ。チームに影響が出るから、しっかり赤点だけは取らないようにしろって。なのにこのザマはなんだ」
ご尤もである。
無様な有様に響子さんは苛々しながら喫煙、紫煙を吐き出してじろっとリーダーや仲間達を見据えていた。
響子さん、不良のくせに意外と勉強はきっちりする人らしい。
ハジメも身なりのわりには勉強はできる方らしく、俺よりも成績が良かった。高得点の数々には目を削いだよ。
なんであんな点数を取れるんだい、不良のくせに。
ココロは俺と同じように努力して勉強の値を上げたみたいだ。
成績こそまちまちだったみたいだけれど、「睡眠時間を削って勉強をして良かった」なにより追試がなくて良かったと胸を撫で下ろしていた。
うん、俺も思う。ほんと努力して良かった。
ありがとう、地味友。ほんとに助かったよ。
「高校になるとメンドクサイっスね。留年の可能性あるんだから。それに関しちゃ俺っち達、楽だな。モト」
「だなー」
能天気に笑っているモトとキヨタだけどお前等、今年は受験生だろ? 中三だろ? 勉強は大丈夫なのかよ。来年から苦労するぞ。
心中で呆れていると、モトが頭を抱えているように声援を送った。
弟分として一言送ってやろうと思ったらしい。目をらんらん輝かせ、キャツはこうのたまった。
「留年したらオレと一緒ですね! オレ、来年はヨウさんと同じ高校に行くつもりなんです! ヨウさんと同じ学年とかめちゃ嬉しいですよ!」
「テメェ……こっちが真剣に悩んでいるっつーのに」
既に留年後の妄想しているようで、モトは熱弁して同じ高校に行くと宣言していた。
モトはヨウと同じ高校に行くつもりなのか。
てことは、来年からめっちゃ煩くならね? 想像しただけで寒気だ。ただでさえモトはヨウ信者だ。
始終もヨウに纏わり付くのは当たり前だろうし、俺へのお小言も増えるだろう。今も舎弟なんだからちゃんとしろだのなんだの、口酸っぱく言ってくる。お前は俺の母親か!
ゲンナリと顔を顰めていると、どこからともなく熱い眼を感じた。ヤーな予感がする。横目で犯人を探す。
「俺っちも、ケイさんと同じ学年になりたいなぁ」
やっぱりお前か。
勝手に人の留年を妄想してしやがって。
キラキラキラキラキラ。キラキラキラキラキラ。
尊敬の眼を送ってくるキヨタは、
「俺っちはどこまでもついていきます」
なんぞと告白してくれる。
たいへん重たい弟分愛である。お前も、俺等と同じ高校を受験するつもりなんだな。愛想笑いを浮かべ、キヨタの頭に手を置く。
「留年はしないけど、お前が学校に来ることを楽しみにしているよ」
「はいっス!」
大感激だとはしゃぐキヨタは頑張ると俺に笑顔を向ける。その気持ちが空回りしないことを願うよ。
響子さんがまたひとつ紫煙を吐き出す。
空気に触れた紫煙が溶け消えてゆく。苦々しい臭いが鼻腔を不快感にさせた。
「とにかく追試をパスしねぇと、チームどころじゃねーだろ。アンタ等、いつから試験だ? うち等の高校は五日後だけど」
きょろっと眼球を動かして近場にいたハジメに問う。
他の面子では日程すら把握していないと判断したようだ。
「僕等のところも五日後だよ。つまり五日で勉強をしなきゃならない」
「でも大丈夫かな」ハジメは不安を口にする。
だよな、俺も不安だ。
ヨウ達って極端に勉強を嫌っているみたいだから。教科書開いた途端、寝ちまいそうだ。個別に勉強する奴等じゃないだろうし。
タコ沢は意外にも一教科だけパスすればいいみたいだけど、残りは四教科も五教科もあるみたいだ。
この調子じゃ、本当に留年に向けた四者面談を迎えちまうよ。どうしたものか。まじで日賀野達との交戦どころじゃないぞ。
すると響子さんが仕方が無いとばかりに案を出した。
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