01-08
深い溜息をついていると、廊下から騒がしい声が聞こえてきた。
利二達が硬直、俺も硬直。
でも俺はぎこちなく利二達の方を見ると、視線で「離れておけ」と俺から離れることを強要する。
利二達はすぐさま俺から離れた。
心の片隅で薄情者! とか思っているけど、離れてくれた方が都合も良い。
いや、あいつ等のためじゃねぇよ?
あいつ等のためでもあるけど、もしも何かあった時、俺、何もデキないと思うし、寧ろ見捨てちまいそう。
格好良いことをしているようで、実は自分のためだ。
騒ぎまくっている生徒達の声が聞こえてくる廊下の方を見た瞬間、教室のドアが勢いよく開いた。
俺は思わず絶叫を上げたくなった。
教室に入ってきたのは、予想していたヨウでもワタルさんでもない。
「田山圭太っつーのは、どこだ? このクラスって聞いたんだが」
き、昨日の赤髪の不良さまじゃアーリマセンか! どうして俺のお名前を知っているのでしょうか?!
なに、貴方様は俺と同じ学校だったってヤツ?
だって、昨日は私服だったじゃないですか!
やば、これはヤバッ!
俺、あの人に二回も恨みを買うようなことをしちゃったんだよね。
一回目は、ヨウとの喧嘩の最中。
二回目は、ヨウと帰っている最中に恨みを買うようなことを。
勿論、不可抗力だけど! っつーか、全部ヨウ絡み、元凶はアイツだ!
俺は弁当片手にコソコソと机の陰に隠れながら、教室の後ろのドアから出ることにした。
「おい! そこでコソコソしているヤツ! 田山圭太だな!」
「ッ、やばっ」
俺は素早く立ち上がり、慌てて駆け出した。
机や椅子を蹴りながら俺を追い駆けてくる赤髪の不良さまは、凄まじい形相をしている。
「覚悟しろ!」
「ごめんって! でも、あれは不可抗力だったんだって!」
机の上に飛び乗って、俺は赤髪の不良さまから逃げる。
その途中でちょっと弁当を食べる。
だって弁当食べる時間だし! 弁当残すの勿体無いし! 横野から「行儀が悪いです!」って指摘されたけど、カンケーねぇ!
髪の不良さまは気に喰わなかったらしく、口元を引き攣らせて指の関節を鳴らしていた。
「舐めやがってゴラァア!」
「ギャー! 舐めてはないからー!」
「待ちやがれ! 田山けいッ、どわぁあああ!」
赤髪の不良さまがド派手にコケた。
どうしたのかと俺が首を傾げれば、透が今のうちにとばかりにニッコリと視線を送ってきた。
どうやら透が赤髪の不良さまの足を、上手に引っ掛けたようだ。マジ透カッケー、地味にカッケー! お前、薄情者だけど勇気ある!
俺は片手を出して透に感謝すると、机から飛び下りて教室から逃げ出した。
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