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00-07
 
 

激しく火花を散らし合ったぼく達は、すぐさま事態を打破するために立ち上がる。

信じられないことかもしれないけれど、ぼく達の気持ちがチェンジした。

人格ではなく、自分の好きなものに対するハートが。


ならば今一度、気持ちを取り戻すしかない。


ああもう、信じる信じないの前にぼくの女の子に対する気持ちを取り戻さないと気が変になりそうだ!

何がかなしくてお茶に情熱を注がないといけないんだよ。

ぼくのお嫁さんは香りの良いお茶っ葉かい?!
 

各々持参していた雑誌を持って、空き教室から階段に移動したぼくは仲井と共に下を覗き込む。

なんとも言えない傾斜だ。下手に落ちたら針で縫う羽目になりそう。

よくぼくも仲井も無事でいられたな。

できることなら痛い目には遭いたくないけど。


横目で相手を見やり、「やるんだよな」「当たり前だ」簡単な会話を交わす。良かった、お互いの意思は変わらないらしい。
 

後は事故を再現するだけだ。

周囲を見渡し、数秒間を置いてぼくは仲井にセッティングするように指示する。


「ぼくは階段から下りようとした。君は上ろうとした。あの時の光景を再現しないと。ぼくが落ちて仲井くんと頭をごっちんするから」

「べつに反対でもよくないか? 要はあの時と同じ刺激を加えれば良いのだ。おれがお前の上に落ちる」


まさかの異論。

「なんで!」あの時と一緒でいいじゃんか! ぼくの主張に、「どっちが痛いかは明確だろ?」受け身になる方が断然痛い。おれが落ちる役がいい。なんぞと仲井が我が儘を訴えてきた。


却下だ。
ぼくだって落ちる役がいい。

仲井の言うとおり、受け身は痛いから!


「あの時と一緒にしようぜ。ほら、さっさと下に行けって」


バチンと強めに背中を叩く。

仲井は踏みとどまったけど、相手の銀縁眼鏡が落ちそうになった。

ブリッジを押してギッと睨んでくる仲井は、「お前が行けば良いだろう」棘の巻いた言葉と背中に痛いもみじ饅頭をくれた。

悲鳴をあげそうになったぼくはこめかみに青筋を立ててつつ、「遠慮するよ」相手の背中をこれまた叩きなおした。

先制したのはぼくだけど、キャツの方が絶対に力が強かったと思う。

だからお返しだ。
これでプラマイゼロだろ?
 

しかーし、相手も負けん気が強いらしく、これまた痛い平手打ちを背中にお見舞いしてきた。

制服越しでも分かる痛み。絶対に手形が付いているに違いない。
 

「やるね」「貴様もな」


視線で激しい火花を交わす。

こいつ、親切心からしたてに出てやってるのに付け上がって畜生。

こうなったら強制的に下におろす!
 

叩く行為をやめ、ぼくは相手の背中を突き飛ばす勢いで押した。


突き落とすつもりはない。


ちょいとバランスを崩してもらって、段を下りてもらおうと思ったんだ。



けれどぼくの目論みは成功しなかった。

何故ならば仲井が大袈裟にバランスを崩して、階段から真っ逆さまに落ちそうになっていたのだから!


え、ちょ、お前ってバランス感覚悪い?!


慌てる間もなく、ぼくの突き飛ばしに驚愕した仲井が咄嗟の判断でモノを掴む。

落ちることを阻止しようと自己防衛が働いたんだ。が、掴んだモノが悪かった。


だって仲井が掴んだのはぼくの制服で、しかもむなぐらっ、ウギャァアアアア―――!
  
 
 

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