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03-16


 

 さて情報収集組は非力組。

 ということは当然、手腕のない俺は情報収集組に回されちまったんだけど、どうしても気になる事があって俺はヨウに偵察組に入れて欲しいと直談判。
 俺自身すっげぇ嫌なんだけど(だって神出鬼没チームだからいつ襲われるかと思うと)、ヨウも最初こそ足手纏いをこっちに入れるのには抵抗があったのか顔を顰めていたけど、何かあると察してくれたんだろう。
 
 「分かった」テメェは俺と同行しとけ、単独行動は不可だ、と許可をくれた。

 一方で目は訴えてくる、後で俺の胸に秘めていることを教えろよ、と。
 
 
 こうして無理やり偵察組に入れてもらった俺は、いつものようにチャリの後ろにヨウを乗せて早速偵察開始。
 とはいえ、神出鬼没な奴等をどう偵察するか見当も付かないから、取り敢えず何手かに分かれて近所を徘徊するってことになった。徘徊している間に情報が入手できたら儲けものだろう。

 仲間がバイク、徒歩で偵察を始める中、俺は愛チャリを漕いで、四つ角近場の路地裏に入る。
 生臭いような湿気たような臭いが立ち込める路地裏は、ジメジメとした空間そのもの。入ってすぐチャリを止めた俺はグルッと視界を見渡し、眉根を寄せた。んー、此処らへんは無理か。

「ケイ。焦らすなっつーの」

 ヨウに呼ばれて、俺は振り返る。
 説明を求めてくるリーダーの顔にごめんごめんと苦笑いを零して、ペダルに足を掛けた。
 シャーシャーっと音を奏でながら前進し始めるチャリ、乗組員の俺は同乗しているヨウに「ちょい見てみたくなってさ」と話を切り出す。
 
「楠本が現れたって場所をさ、この目で見たくなって同行させてもらったんだ」

「それだけか? 大したことなのか、それ」

「んー、大したことないかもしれないし、大したことあるかもしれない」

 「なんだそりゃ?」詳しい説明を求めてくるリーダーに、「ちょい俺に考える時間をくれ」もしかしたら間違ってるかもしれないし、ハンドルを右に切って路地裏から大通りに飛び出す。
 「わーったよ。リョーカイだ」テメェに任せた。そう言ってくれる舎兄。さすがはリーダー、俺に考える猶予をくれた。こうやってジミニャーノな俺にも信用を置いてくれるんだから、器が広い。頼りになるぜ。
 
 偵察をしつつ、俺はチャリを楠本の出現場所に向けた。

 楠本の出現場所は主に路地裏や裏道、空き地。奇襲場所も以下同文。
 奴は人気の無い場所に出現しやすいようだ。人目を避けたいから閑寂な場所を選んでいるんだろう。ヨウはそう意見を零していたけど、俺は土地土地を回って抱いていた可能性を膨張させていた。
 
 一時間ほどの徘徊の末、俺達は収穫もないまま浅倉チームのたむろ場に帰還。他組と合流して、収穫を確かめ合った。
 
 すると一組が楠本チームらしき不良に襲われかけたという。
 場所は小学校近くの神社南口。またしても奇襲を掛けられたらしく、味方側は軽く負傷していた。だけど向こうに大きな痛手を食らわせたから、敵の方が先にトンズラしたとか。当然追い駆けたらしいんだけど、あっちゅう間に逃げられてしまったらしい。

 「そうすぐに見失うか?」誰かが妥当な意見を零していたけど、「瞬く間だったんだって」曲がり角を曲がったらもういなかった。と、その組は主張。必死さからして真実なのだと察する事が出来る。
 
 意見が飛び交う中、俺は部屋の隅に腰を下ろして地図を広げてその場所に印を入れた。
 小学校近くの神社南口…、付近には住宅が多数。一軒家ばっかあるみたいだ。負傷した人間があっという間に逃げられそうな道らしき、道はなさそうだけど、あくまでこれは地図上の話だ。紙切れの情報と現場は若干異なっているわけで。
 
 腕を組んで地図を睨めっこしていた俺は、今しばらく一人で考え込んでいた。 
 情報収集組が戻ってくるまでジーッと考える人のように考え、彼等が戻って来ると情報を共有してもらう。楠本の目撃現場とか、他のチームの不良が襲われた話とか、そういった事細かな話を聞き、黙々と地図に必要な情報を記載していく。




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