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03-04


   
 「とにかく行こうぜ」「はい!」ヨウとモトのやり取りに、「俺っちは」遠慮を見せようとするキヨタ。
 そろーっとキヨタの背後に忍び寄った俺は、「逃・が・さ・な・い」裏声を使って弟分の両肩に手を置く。ひぃっ、ぞわっと背筋を伸ばして驚くキヨタの声から推測して俺の存在に気付いてなかったようだ。失礼なヤツだなお前、俺ってそんなに存在感がないか?
 
「俺が行くんだから、貴方も来なさい。じゃないと、圭太、泣いちゃうんだから」

 振り返ってぽかーん顔を作るキヨタだけど、

「ケイさんも行くんっすかっ! 俺っちを誘ってくれるなんてっ、大感激っス〜〜〜!」
 
 弾丸のようにタックルしてきやがったよ、こいつ。
 
 どうにか踏み止まった俺はキヨタの体を受け止めて、「んじゃ行こうぜ」キヨタの首に腕を絡めた。
 「てかさ、聞いてくれよ」さっきの不幸話を切り出そうとすれば、何でも喜んで聞くとキヨタ。……もしかして俺達、スキンシップが足りないのかもな。大した話でもないのに尾を振ってくるなんて。
 そういや俺、いっつもヨウと一緒だしな。何かあればヨウとばっか話す、もしくは同級生と話すもんだから。
 

 たまにはじっくりキヨタと話しても良いかもしれない。

 折角の機会だ、ヨウもモトと盛り上がっているみたいだし、俺は俺でキヨタと話してみよう。
  

 チャイムを総無視して校舎を出た悪い子ちゃんの俺等は二対二に分かれて談笑を開始。
 今日はチャリもお休みだ。だって四人で出掛けるのに俺だけチャリとか無いだろ?

 向こうはモトの失敗談で盛り上がっているみたいだ。
 時折、「テメェ馬鹿だろ」ヨウの茶化す声が聞こえてくる。俺達は俺達で担任から逃げ出したことで盛り上がっていた。逃走談にキヨタは、「後でやばいんじゃないッスか」と可笑しそうに笑声を漏らす。そうなんだよ、相槌を打つ俺は一緒に怒られてくれよっと誘ってまた一笑を零した。
 
 そうして談笑していた俺だけど、ふっと思う点があって話題を切り替える。内容は“エリア戦争”の延長戦について。

「なあキヨタ。お前はさ、居場所とか、大切な人とか、そういうのが消えたり…、奪われちまったりしたら、どうする?」

「唐突な質問っスね」

 こてんと首を傾げて見上げてくるキヨタに、俺は苦笑した。

 
「なんとなくお前の意見を聞きたくなって。俺さ、楠本に会っただろ?」


 あの時のあいつの目、すっげぇ冷たくて…、復讐に燃える目ってあんなにも冷たいのかって恐怖したんだ。
 榊原って奴は俺等からしてみれば、結構なまでにワルだったけど、楠本にとっちゃ大事な奴だった。それこそ復讐なんて言葉で着飾るほど。
 
 じゃあもし、俺があいつの立場に立たされたらどうするんだろうって疑念を抱いた。
 正直、俺は想像もできなかった。今の居場所や仲間が居心地良すぎて。失うかもしれない、そう思っただけで恐怖しか出てこなかった。先の未来が見通せなかったんだ。仮未来さえ俺は想像ができない。復讐に走る俺ってのも想像できなかった。
 

「それだけ今の居場所も仲間も大事なんだよなぁ。改めて思い知らされたよ。キヨタはどう考える?」
  
「俺っちだったら…、そうっスね。例えばケイさんがヤられたり、消えちまったり、それこそ楠本のようになっちまったら、迷わず感情のままに走ると思うっス。仇を絶対にとってやるって相手を憎むと思います」





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あきゅろす。
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