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07-03




「うえぇーっ、荒川の不細工! あんちゃんの方がかっけー!」


 谷がガキくさく舌を出し、


「お前等、兄貴を見る目皆無!」


 川瀬がせせら笑うように挑発。 

 よってモトの気持ちがポッキリ折れそうになった。「お前等ッ」人がおとなしくしていればっ、調子付きやがってッ…、一発かましてやりたいと握り拳を作るモトの中で葛藤が始まる。協力するべきか、反論すべきか、協力するべきか、嗚呼、反論するべきか!
 弟分として反論したいが、オトナの対応をしたいのもまた本心である。さあどうする嘉藤基樹!
     
 と、それまで傍観者になっていたココロが四人の前を通り過ぎ、助走をつけてキャビネットに飛び移る。そしてそのまま扉を押さえつけた。


「これで少しは頼りになると思いませんか! 私の体重と力が加わって、よりバリケード対策は万全になったと思うんですけど!」


 我ながら名案だと、キラッキラ目を輝かせながら首を捻って此方を見てくるココロ。
 
 喧嘩の火種もなくなるのではないかと考えたらしいのだが、かなり微妙である。
 
 というか、ココロにバリケード役をさせるくらいならば、自分達が受け持たなければ! モトとキヨタはお局さまのアクドイ表情を思い出して血の気を失くす。内なるところで、お局さまが“まさかてめぇ等。妹分に危険な真似させてるんじゃねえだろうな? あ゛ーん?”なんぞと脅してきたりこなかったり。
 「ココロさん!」「オレ達がやるから!」寝かせているキャビネットに飛び移って二人はポジションチェンジだと訴える。「大丈夫です」私でもこれくらいならできますよ、笑顔を零すココロだがそういう問題ではないのだ。そういう問題では。
 
「ココロ、下りておりて! オレとキヨタでバリケード対策強化を図るからさ! なあキヨタ!」

「そうッスよ! ココロさんは危ないんで下りて「じゃあ。三人でやればいいじゃないですか」ええっ、そうきますか」

 困惑するキヨタに、ココロは一人より三人だと一笑。
 キャビネット+三人分の体重が掛かれば、そうそう内鍵が壊されても突破するのは難しいとココロは意見する。

 「なるべく時間を稼ぎしましょう」仲間達に連絡を入れたのだ、遅かれ早かれきっと仲間が助けに来てくれる。それに此処で手間取らせておけば、必然と自分達を追い駆け回している人間が集中するに違いない。
 助けを呼んだものの、よく状況把握していない仲間達に怪我をさせたくはない。仲間達のためにも、人を分散させておくより、人を一箇所に固めて置いた方が無難なのではないかとココロは二人に同調を求めてきた。

「私は喧嘩の素人なので、よく喧嘩については言えませんけど…、喧嘩する場合、人間が一箇所に集まっていた方がやり易くありませんか? お二人のご意見はどうです?」

「確かにあっちこっち人が分散していると、やり難くはありますっス。誰が何処にいるか、常に神経を尖らせておかないといけないんで、余計神経を使うんっスよ」

「だったら尚更、時間を稼ぎましょう。この扉、上1/3が曇りガラスです。廊下の状況がはっきり分かるわけじゃありませんが、人の行き交いくらいなら分かりますよ。ということで、お二方もお手伝いお願いします」

 ココロは矢島舎弟組を手招きした。
 自分達も? 己を指差す舎弟二人に三人より五人だと告げ、おいでおいでと手招き。
 よってキャビネットを中心に、荒川チームがキャビネットに乗り上がってしゃがみ込み、残り二人はキャビネットを押さえるように床に座り込んで対策を打つ。こうして五人の人間がバリケード役を受け持ったため、外部の衝撃によって内鍵が悲鳴を上げても、そうは打破できなくなった。

 「傍から見れば」間抜けな光景だろうな、川瀬の嘆きにココロは苦笑い。
 「すみません」こんな方法しか思い浮かばなくて、と謝罪する。「んにゃ」誰よりも名案なんじゃね? 筋も通っていたし、川瀬は素っ気無く返した。




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あきゅろす。
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