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別名:偽名事件


 
 
 ◇



「ってことで、朝のSHRは終わりだ。これからHRに移る。さっさと班決めと係り決めを終わらせて帰りたいだろ?」
  

 
 俺もさっさと帰りたいしな。
 
 なーんて憎まれ口を叩く担任は、さっさと黒板に七つの長方形を描き始めた。更に枠を作って、「この中に名前を書け」右が男、左が女だ、と指示。取り敢えず全員の名前を書いて、後で調整すると説明を加えた。
 男女合わせて六人ずつの班編成なんだなぁ、どんな班になるんだろ。なんとなく不安なんだけど。
 
 あ、ちなみ俺等の担任は、去年の俺の担任。前橋(まえばし)だ。
 可哀想にな、去年も素行の悪い生徒で頭を悩ませていたっていうのに、今年はそれ以上に素行の悪い生徒が一部集まっちまった。
 前橋はいっちばん最初の顔合わせの日に、俺等クラスメートを見て、「頼むから問題だけは起こすな」開口一番に忠告してきた。誰に向けられた台詞かは言わずもがな、だろ。


 胃薬が必要かもしれない、と小さな呟きを耳してしまったけど敢えてスルーした。スルーすることも優しさだろ! なあ?!
 
 
 さてさて、それは置いておいて、前橋の指示によって生徒達が一斉に動き出す。
 女子は女子、男子は男子、友達と喋りながら相談しながら、思い思いの枠に名前を書き書き。ヨウと約束していた俺は、舎兄と一緒に名前を書こうと動く。その際、ヨウがおもむろにジミニャーノのひとりに声を掛けていた。
 

「五木、一緒の班になろうぜ」
 
  
 声を掛けていたのは利二。
 「自分ですか?」予想外の申し出だったのか目を真ん丸お月さんにする利二の腕を引いて、「ケイ。一人追加な!」まるでラーメン一丁追加的ノリで俺に指示。「OK」俺はさっさと自分の名前と舎兄、それから利二の名前を書き足した。
 
 これはヨウなりの優しさなのかもしれないな。俺と利二、ジミニャーノの中でも特に仲が良いって知ってるから。
 
 俺の中で支えになっている理解者は二人、不良のヨウとジミニャーノの利二なんだ。どっちも大事だからこそ、二人と班になれることは嬉しかった。光喜や透と班になっても嬉しいんだけどさ!
 利二もヨウの気遣いに気付いたのか、微苦笑を零していた。


「退屈しねぇ面子にしねぇと面白くねぇしな!」


「………」

「………」


 ………。
 
 こいつ、もしかして俺等のことを思ってしてるんじゃなくって…、まさか自分のため…か?
 いやいやいや、そんなことねぇよな。俺は知ってるんだぜ、お前のいかんなく発揮されるリーダーシップを! 仲間思いなお前だ、きっと俺等の仲を気にして。
  



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あきゅろす。
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