01-07 (……。なんて言っても、なぁ。俺は地味であり、不良だもんな) 俺は吐息をついて、椅子に腰掛けた。 ジミニャーノ達は俺を怖がっていないけど(寧ろヨウと話したりもするけど)、クラスメートがなぁ。 不良のヨウやタコ沢、んでもって直接的に関わっている俺と一線引こうとしている。なんっつーか空気で分かるんだよ、クラス替えをしたあの日から、んにゃその前から、ヨウ達とつるむようになって徐々に周りから一線引かれてるなぁって。 不良って問題児と距離を置きたがる周囲の気持ちは分かる。 目を付けられたらクソメンドクサイこと極まりないし、結構そういう奴ってクラスに迷惑掛けたりするから、疎ましく思うんだよな。頭では分かってるんだよ、頭ではさ。 でも実際自分がその立場に置かれたら、なかなかにツライぞ。 居心地が悪いというか、空気が悪いというか、なんっつーか。そう露骨に線引きしなくてもいいんじゃね? って思うかさぁ! 今まで平和平穏安穏に生きてきたからこそ、そういった目を向けられることに慣れないんだ。 不良達の内面を知れば知るほど奴等の強さとか、脆さとかを知って、絆を深めて仲良くなって、今までの生活に新しい色が増える。だけど同時に今まで築き上げていた生活が失ったりもするんだな。二年に進級してそれをヒシヒシと痛感するようになったよ。 去年は日賀野達のことで一杯一杯だったから、一線引かれている現実を肌で感じても、そっちにまで気が回らなかったんだよなぁ。 あーあ、じっみーにひっそりと教室の片隅で生きていた時代が懐かしいな。 べつに今の生活に後悔とか、そういうのはないんだけどさ。余所余所しい目を向けられることに慣れてないだけで、そいつ等と仲良くなりたいかって言われたら…うーん…、仲良くっつーか、あんま変な目で見て欲しくないって感じ。 そこまで一線引かなくても俺、誰彼に目を付けて喧嘩を売るってこともないし。向こうが俺を知っていても、俺的には「どなた?」って感じが多いし。 小耳に挟んだ誇大な噂に、ついつい「そっこまで悪いことしちゃないって!」って、反論したくなる時もあるし。 こう思うと、実は不良の皆もこんな気分を味わっていたりするのかなー。 以前の俺だったら周囲の皆と同じことをしていたから、強くは言えないんだけどさ。 ま、良いんだ。 多少教室の居心地が悪くたって、すっごく仲の良いジミニャーノ達は変わらず俺と友達でいてくれるし、ヨウや不良の皆と関わったことも、最初こそ嘆いてはいたけど今じゃ後悔もしてないし。 俺の居場所はジミニャーノ達の傍、んでもって不良達の傍なんだ! ……でも、やっぱり一線引かれるのは居心地悪いよなぁ! フツーにしてくれるのが一番だよなぁ! お互いのためにもフツーにしようぜ、フツーに! 「はぁーあ」盛大な溜息をつくと、後ろから背中を突っつかれた。 俺は体ごと横を向いてヨウに視線を投げる。机に上体を預けているヨウは、頬杖をついてニッとイケメンスマイルを見せ付けてきやがった。女子も見惚れる笑顔だ。毎度の事ながらこいつの顔、つっくづく腹が立つな。ほっぺ捻り抓ってやろうか! もっちろんできない前提で言ってるんだけどな! 「どうした?」俺の問いに、「んにゃなんでもねぇ」ご機嫌なヨウはスマイルを大安売りしている。 察するにヨウは午前中授業(しかもHRのみ)ですこぶる嬉しいらしい。午前授業であっても、そうでなくても、ヨウにはあんま関係ないと思うんだけどな。よーくサボるし。 笑顔を振り撒いているヨウに、心中微苦笑を零していると、キャツは直後こんなことを言ってきた。 「今日は朝から気分が良いや。授業は早く終わるし、ケイとタコ沢のオモレェ光景を見れたし。さっすがは俺の舎弟だよなぁ。あんな追いかけっこ、そうそう見られるもんじゃねえぞ」 思い出しただけで笑えてくる。 「オモレェ」ニッコニコ顔ヨウの大層失礼な言葉に、「ハハッ…ソーデゴゼーマスカ」俺はニッコニコ引き攣り笑い。 コイツ…人の不幸を楽しみやがってっ、性格悪いぜ! そりゃお前みたいに手腕が無い俺が悪い、悪いさ。タコ沢と正々堂々勝負をしなかった俺が悪いさ。でも喧嘩できないんだから仕方が無いだろ! 担任が来るまでヨウはいっつまでもニッコニコ笑顔、俺はニッコニコ引き攣り笑いを浮かべていたのだった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |