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06-20


 
 「イケメン乙」ボソッと愚痴れば、「ケイさん?」今のはなんっスか? キヨタが困惑気味に見上げてくる。
 おーっと、どうやら俺は田山ワールドに引き篭もっていたようだ。悪い癖だぜ、これ。傍から見れば奇怪な事極まりないって利二から度々注意されているから、気を付けないとな。直るかどうかは別だけど! だって一人漫才は俺の生き甲斐だったりするわけだし?

 これがなくなったら、

「俺は田山じゃなくなる。だよな、キヨタ?」

「ケイさん、俺っちを置いてどっかの世界に行かないで下さいっス! 兄貴、カムバーック!」
 
 キヨタに嘆かれて俺は笑声を上げた。今のはわざだよ、わざと。



      チリン。
 

 チリン。



     チリン。


 

 何処からともなく金属の弾くような音が聞こえた。パチン、と手を叩くような音も次いで聞こえてくる。

 はて今の音は? 首を傾げる俺に倣ってキヨタも首を傾げた。俺達には関係のない雑音だと思ったんだけど、またチリンっと金属音。次いで聞こえてくる肌を叩く音。立ち止まり、素早く振り返った俺は空高く放物線を描く硬貨を捉えることに成功する。距離があるから断定はできないけど、あの色からして百円玉かな?
 吸い込まれるように硬貨は人の手の甲の上に舞い落ち、その上から手でプレスされていた。

 「さあて」表か裏か、どっちでしょう? 数メートル先の電柱に寄りかかっているそいつは、ニッコニコ顔で俺達にその手を見せて声を掛けてくる。妙に赤茶髪が印象に残る、私服の兄ちゃんがそこにはいた。タメかもしんねぇけど、私服じゃあ分からん。年齢不詳と称しておくべきだろう。
 あれ、どっかで見たような顔だけど、俺の勘違いか?
 
 「はあ?」キヨタは誰だよあんた、と喧嘩腰に話を切り出す。
 「こらこら」喧嘩売らないの、俺が止めに入るとキヨタはぶすくれた顔で相手を睨み始める。んでもって、「誰ですか?」質問を試みた。俺達に喧嘩を売りにきた兄ちゃんじゃなさそうだけど。

 俺の問い掛けに、


「表か、裏か、さあどっち?」


 なるほど答えてくれないわけね。
 
 なんかメンドクサイ奴に捕まったな…、逃げるっての手だけど、まあ、害はなさそうだし、答えておくか。言わないといつまでも付き纏われそうだ。
 「表」俺の答えに、「OK」そいつは口角をつり上げて重ねている手を取った。硬貨の面は俺達からは見えないけど、口笛を吹いてそいつは硬貨を指で挟み、その面をこっちに見せてくれた。
 ゲーセンの硬貨なのか、それとも海外の硬貨なのか、それは百円玉じゃなさそうだ。
 

「ジョージ・ワシントンが載った面。お見事、表だね。ちなみに裏はワシ。25セント硬貨を見たことは? アメリカじゃドルのクォーター分の価値を持つんだけど」
 

 あるわけナーイじゃないですか。
 
 俺は生まれてこの方、ジャパンから出たことがないんだからな!
 旅行したことあると言えば、あー、大阪と福岡、それから長崎くらいだな。国内旅行しかしたことのない俺だから、当然海外の硬貨なんて触れた事がない。今だって俺、アメリカのお金に「なんで50円の半分の金があるんだ?」って首を傾げるぞ。25円なんて半端だよな、計算し難いっつーか、細か過ぎるのも難点っつーか(皆も思ったこと無いか?)。

 あ、ちなみにこれ、日本円に換金して考えているんで夜露死苦なんだぜ!

 
 ……で、結局これは一体?





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あきゅろす。
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