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017


  
 
 カーン、カーン、カーン―…。


 チャイム代わりの鐘の音が鳴り、教室で駄弁っていたアルスとフォルックは各自パートナードラゴンを連れて演習場に向かっていた。
 「ベルトルくん戻って来なかったね」フォルックは筆記用具を片手に、肩を並べるアルスを一瞥して話題を切り出す。「さあな」あいつのことなんて知らない、とばかりに鼻を鳴らすアルスは頭の後ろで腕を組んで欠伸を噛み締める。

 そんなこと言っちゃって…、フォルックは苦笑いを零した。


「本当はあのペアが気になるんでしょ? アルスって顔に出やすいし、何かしたんじゃない? 助けてあげるような何かを」

「どーだろ。喧嘩吹っ掛けたかもなー」


 おどけるアルスにフォルックはやっぱり何かしたんだろ、と笑声を漏らす。
 
 誤魔化し笑いを浮かべるアルスは、何が悲しくて胸糞悪い好敵手(ライバル)を助けるような真似をしなければいけないのだと、シニカルに口角をつり上げる。まったくもって不似合いだ。親友が悪役面するなんて。
 フォルックの指摘に、「うっるせぇな」放っとけとそっぽ向くアルス。ラージャを連れ、とっとと歩調のペースを速める。
 素直じゃない、本当は心配してるくせに。フォルックはナーガと顔を見合わせ、一笑した。


「ん? ここら辺荒れてるな…」

 
 渡り廊下を歩いている時のこと。
 先を歩いていたアルスは周辺の茂みや木々が荒れていることに気付く。大地に転がっている小枝や木の葉に眉根を寄せ、まるで嵐が通ったような後だと首を傾げる。
 パートナーに同調を求めると、『微かに魔力を感じる』此処で何らかの魔法が使われたのではないか、とラージャが意味深に意見。

 アルスは足を止め、周辺を見渡した。


「ラージャ、嫌な予感がする。魔力を辿れるか?」

『ちょっと待ってろ。ん…、向こうだ』
 
  
 ラージャがアルスの肩を離れ、飛行してこっちだと案内する。

 「よし」アルスは案内役をラージャに頼み、渡り廊下から外れた。「アルス?」どうしたのだと後からフォルック達も追って来るが、振り返ることなくアルスはラージャの後を追い駆けた。警告警鐘警笛が胸の内で鳴り響いている。なんだ、この嫌な予感は。

 外れてくれ…、懇願を胸の内に、顔を顰めながら辿り着いた先、アルスは足を止めて絶句することになる。
 

 演習場の裏周辺は木々が折れて、薙ぎ倒されていた。
 せっかく飢えられた花壇の花もおじゃん。首を垂らして萎れている。砂が舞い上がったのか花は砂粒で汚れていた。同じように、うつ伏せに倒れている人物も砂まみれのボロ雑巾。

  
「べ、ベルトル!」


 アルスは血相を変え、倒れている同級生を抱え起こした。
 最初こそ応答はなかったが、何度かの呼び掛けに薄っすらと目を開け、青々とした瞳を此方に覗かせてくる。浮上したばかりの意識ははっきりと覚醒していないらしい。しかし、アルスの体にしがみ付き、上体を起こそうと躍起になっている。
 



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あきゅろす。
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