008
『アルス。別に言わせとけばイイじゃないかよ。アルスのペースがあるってさっき自分で言ってただろー?』
「此処まで言われたんだぞ! 胸糞悪いったらありゃしねぇ!」
「結果を出せない奴は、クズと一緒だ」
「ッ、あーそうかよ。では俺は三流ですね。努力しても結果を出せないのですから。ということは、俺が三流だと認めれば? 俺を見下していらっしゃるアナタ様は“自称”一流でしょうか?」
アルスの言葉に、ベルトルの表情がガラリと変わる。
静かに立ち上がると、ジランダに視線を向ける。ジランダはビクッと身体を震わせ、首を横に振った。
『いけません。ベルトルさま。今は授業中です』
「ああいうタイプは身を持って、実力の差を教え込ませた方がイイ」
『しかし!』
「俺に指図するのか?」
睨まれたジランダは、ウッと言葉を詰まらせた。そして渋々と頷く。
嫌な予感がした。かなり嫌な予感がした。
フォルックが机に座っていたナーガを抱いて、その場から立ち上がった時、ベルトルが呪文のスペルを唱え始める。
これは【マナ】をドラゴンに送る時の呪文。初対面当初、ベルトルが自分達に攻撃してきた、あの出来事がまた繰り返される!アルスが舌打ちをして机から離れる。
【マナ】を受け取ったジランダが、大きく息を吐いた。
刹那、火の塊がアルスに向かって放たれる。
ラージャが咄嗟に、アルスの前に出ると火の塊を噛み飲み込んだ。
「ラージャ!」
『うわっちーぃ! 俺ちゃまに今触ると火傷するぜ! 何でって、それは俺ちゃまが、今【マカ】を体内に入れたからだ! んでもってー!』
大きく息を吐いてラージャが、火の塊を吐き出す。
先程の攻撃をそっくりそのまま返したのだ。
ベルトルが薄く目を見開いている中、ジランダがベルトルの前に出てシールドを張った。お互い怪我なく事なき事を得たようだ。ラージャは振り返りアルスに聞く。
『アルス。無事か?』
「俺はな。けど、お前は」
『繊細な俺ちゃまの舌、ヤケドしちまったぜチクッショー!』
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