[携帯モード] [URL送信]
009


  
 入ってきたのはこれから担任になる教師のようだ。手を叩いて席に座るよう言う。
 アルスは少年を睨み付けていたが、フンと鼻を鳴らしてフォルックと共に席に着いた。


 担任は男性……いや、あの男性は。

 
「こんにちは。皆さん……って言っても、3人だね」
『あ、俺達を売ってたドラゴン売りの』


「はい、そーです。ドラゴン売りの店員です。会ったことある人もいるよね? 僕は教師ではないんだけど、ドラゴンを扱う人が少ないから派遣されてきました。自己紹介します、僕は君たちの指導をするギュナッシュード・ユルファス。ギュナッシュと呼んで下さい」


 ニコニコと笑うギュナッシュは出席簿を開いた。
 「見事に少ないね」微笑しているギュナッシュは全員出席と書き込んでいた。
 ということは、全員合わせて3人?! 少ない、少なすぎる『ドラゴン使い』のクラス!アルスとフォルックは同じことを思った。
 

「アルス・ウリダーケくん。フォルック・テイクラニくん。ベルトル・ゲゼルくん。以上3名。これから宜しく」


(……あいつ、ベルトルっつーのか)

(へえ、ベルトルくんって言うんだ)

(アルスにフォルック……マヌケそうな名前)
 
 
 3者思い思いのことを思っている中、ギュナッシュはニコニコと笑って出席簿を閉じる。
 ひとりひとりのパートナードラゴンに目を配り、咳払いをした。


「ドラゴン使いはパートナードラゴンを何体も持てる。でも、君たちはまだまだ未熟な見習い。だから、勝手にドラゴンを増やさないように。それから、ドラゴンは君たちの“マナ”によって力が増大するんだ」

「あのー、マナって僕等の魔法の力のことですよね」

「そうだよマナの使い方は後日教えるとして、ひとつ覚えてもらいたいんだ。ドラゴン使い、生半可な気持ちでなれるものじゃない」
 
 
 クジ引きで嫌々なったかもしれないけど、引いたものはもう仕方が無い。
 真顔になったギュナッシュは、真剣な口調で3人の顔を見ると次のように言う。
 

「君たち次第で、ドラゴンは強くも弱くもなる。弱くなれば君たちは怪我をするし、パートナードラゴンを死なせてしまう。それだけ厳しい職業なんだ。だから、ドラゴン使いになるなら死ぬ気でなって欲しい」


 最後の言葉を言う頃にはギュナッシュの顔が綻んだ。

 死ぬ気でなって欲しい、そんなにも険しく危険な職業なのか。
 アルス達は改めて思い知らされる。ギュナッシュは簡単な説明をしていくと「今日は此処まで」と早くも帰るように言ってきた。


 今から授業をするのでは?


 そう思ったが、ギュナッシュは先程の出来事をちゃんと見ていたようで「今日はお互い顔を合わすと程度ということで、明日から仲良く授業ね」と遠回し遠回し頭を冷やせと言ってきた。
 
 悪いのは自分達ではなくベルトルではないだろうか?
 アルスはつくづくそう思う。腕に抱いているラージャを見下ろす。小声でラージャに声を掛けた。

「大丈夫か?」
『ヘーキヘーキ。心配するな』


 ラージャ、強がっているんじゃねえか?


 アルスはそう思って仕方がなかった。 
 
 



[*前へ][次へ#]

10/15ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!