010 挨拶をしてギュナッシュが教室から出る。 3人だけになった教室に沈黙が訪れるが、アルスはラージャを抱えたまま鞄を肩に掛け、フォルックに「帰ろうぜ」と声を掛ける。 フォルックは慌てて立ち上がると頷いてナーガを呼んだ。ナーガはフォルックの肩に乗った。身支度を済ませたのはベルトルも同じようだ。 ふとアルスとベルトルの視線が合い、青い火花が散った。 「……今日のこと、覚えてろよ」 「三流ドラゴン見習いのことなんて忘れたくても忘れられない。俺はお前等と違って望んでいるドラゴン使いになれたんだ。すぐ見せてやる、実力と覚悟の差」 「誰が三流だ?! まだ分からねぇだろ!」 「吼える奴ほど三流だ。そこのドラゴン、三流の主人を持って不運だな。魔力は強いんだ、主人に愛想尽かした時は俺のドラゴンにしてやる」 言いたい放題言ってくれる、この野郎。 人を三流三流って……こいつ、変態だぞ? 知らないだろ!けど、魔力が強いのは本当だ。 反論したいがデキないアルスはフォルックに「帰る!」と大声を出し教室の出入り口に向かう。 慌ててフォルックがアルスの後を追い駆ける。 と、ラージャがアルスの腕から抜け出した。 アルスが驚いているとラージャはベルトルに向かって胸を張って言った。 『俺ちゃまの主人はお前以上だ! なにせ、俺ちゃまが見込んだ奴なんだからな!』 それだけ言うとラージャはアルスのもとに戻った。 アルスは呆然としたが、微苦笑してラージャを肩に乗せるとベルトルに「明日から覚悟しろ!」と言い放ちフォルックと共に教室を出たのだった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |