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012


  

「使えるも何も、ジランダは今、初めて組む俺と【マカ】を生み出す事ができたじゃないか。俺とラージャなんて1ヶ月も掛かったってのにさ、あいつに怒られちまうよ。こんなにも成功しちまったらさ」


 ―…なあ、ジランダ。その不安、ベルトルに言っても罰は当たらないと思うよ。

 俺も不安をラージャにぶつけて苦難を乗り越えてきた。一人で解決しようとしないで、パートナーと解決すればいいさ。もしかしたらあいつだって待ってるかもしれない。ジランダが不安を口にしてきてくれるのを。

 あいつ、どーも不器用みたいだし。
 バッカみてぇだよな、あいつの腰は重石かってーの。そういう意味じゃ、あいつは三流かもしれない。ジランダの気持ちを酌むことも、自分から気持ちを動こうとも、気持ちを伝えようともしないんだから。
  
 
 フンッと鼻を鳴らすアルスは、次第しだいに意地の悪い言の葉を吐いて、ジランダの頭を一撫で。地面に体を置いて腰を上げる。
 
 「ごめん、水飲みたくなったから」先に戻るとアルスはジランダに振り返り、ちょっとばっかし体が辛いのだと微苦笑。まだまだ自分も未熟だと目で笑い、ジランダを励ます。ジランダも一笑し、再度礼を告げて頭を下げた。
 気にしなくても良い。アルスは一束にした夕陽色の髪を尾のように靡かせ、颯爽と立ち去って行く。

 ジランダは背を見送った後、ふぅっと溜息をついて空を見上げた。


『ベルトルさまに言えたら…、不安も何もなくなるんでしょうか? でも弱音など吐ける筈ないです。吐けど、結局はベルトルさまにご迷惑を掛けてしまうのですから』





「―――…そんな拗ね顔で俺を睨まないで下さーい。そりゃ俺が悪かったデース。ゴミンナサイ」


 演習場の校舎を曲がった先、ぶすくれて腕を組んでいるクラスメートは校舎に背を預け、横目でガンを飛ばしてきた。
 アルスは軽く両手を挙げて降参ポーズ。勝手にパートナーを借りたことを素直に謝罪する。けれど仏頂面を作っているその人物に、アルスは反省の色を一つも見せず、意地の悪い笑みを浮かべ、わざと煽るように鼻で笑った。

「おかげさまでパートナードラゴン以外でも【マナ】が送れることを、実体験することができた。俺はお前とジランダに感謝するよ。それに…、ジランダは良いドラゴンだ。俺と完璧な【マカ】を生み出すことが出来たんだから」

「………」


「そのドラゴンに拒絶されてちゃ話にならないよな。どのドラゴンを選んでも結果は一緒だと思うぜ。魔法技術が勝ってるだけじゃ、お前は俺に勝ってるとも言えない。あーあ、今のお前とじゃ張り合う気も起きねぇや。面白くねぇし。
あ、そうそう。ジランダ、いらなくなったら、俺にくれよな。あいつと俺、すっげぇ気が合うみたいだから。

不器用の三・流・くん?」

 
 ドラゴン使いの原則はドラゴンを一匹以上持つこと。俺だったらもっと上手にあいつを育ててみせるからさ。
 せせら笑い、アルスはひらひらっと手を振って早足で教室のある校舎へと戻って行く。
 
 それを睨みつつ、わざとらしい発破に舌を鳴らし、ベルトルは口を結ぶ。
 
 「礼は言わんからな」あいつが余計な世話を焼いただけだと、悔しそうに鼻を鳴らし、忍び足で演習場裏の広場に目を向ける。
 浮かない顔を作っているパートナードラゴンがそこにはいたが、ポツリと零す普段では聞けないパートナーの吐露に顔を顰め、「三流は俺か」小さな自嘲を零した。


「俺とジランダでさえ、あんな輝きは放たなかった」


 自分達が生み出す【マカ】と、アルスとジランダが組んだ【マカ】の輝きの差に、そして威力の強さにベルトルは胸の内が暗雲が包まれた。
 同時に相手の下手くそな発破に乗る自分がいる。負けたくない、士気が高まる自分がいるのだ。




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あきゅろす。
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