007 「おい、ジランダは? ベルトル」 「煩い、口を開くな。三流」 ………、大丈夫、まだ俺は大人になれる。 「だっから、ジランダは」 「だから黙れ。飯が不味くなる」 結果、大人になるにはまだ早いようでした。 ピキッ、アルスは齧っていたリンゴを荒々しく噛み砕いた。 普通に会話するだけで、この態度。相変わらず自称“一流”サマは偉そうだこと。 「なんだと?」うっかりと口に出してみたいで、ベルトルが眉値をつり上げてくる。だからといって臆するアルスでもない。うぇーっと舌を出し、口端を引っ張った。 アルスの子供じみた挑発に、ムッと握り拳を作るベルトル。 結局、クラスの空気を悪くしてしまったわけだが(フォルックとナーガから含みある涙目が投げられた)、アルスは自分の責任ではないと鼻を鳴らしてリンゴを齧る。 「パートナーがいないよーだけど?」意地の悪く尋ねれば、「知らん」昼休みと同時に出て行ってしまったのだと素っ気無く返した。どうやら昼食は別々に取っているらしい。普段から昼食は個別に取っているようだが…。 (この状況で別個ってお前さ) ジランダは誰の目から見ても情緒不安定、普通は傍にいてやるものなのではないか。 不機嫌顔を作るアルスだが、それを口にすることはなかった。言えば、火に油、薪に油を添えることになる。フンッと鼻を鳴らし、「薄情者」アルスは聞こえぬ声で悪態をつき、齧りかけのリンゴをそのままに、ナプキンの上に置いてある新しいリンゴを手に取って腰を上げる。 『何処に行くんだ?』パートナーの行動に、ラージャは翼を広げて肩に乗る。 まさかパンツでも見せてくれるのか、目を爛々に輝かせるラージャの頭を小突き、「ラージャは此処にいてくれ」少しばかりひとりで散歩をしたいのだと返答。含みある台詞に、『お前ってお節介焼きだな』ラージャは仕方が無さそうに席に戻った。 「優しいって言えよ」反論を一つ、笑声を一つ、隠れあっかんべーを一つ。 幸いなことにベルトルは既に自分の方に興味を示していなかった。フンッとまた一つ鼻を鳴らし、アルスは齧りかけのリンゴの身を噛み砕いて教室を出て行った。 「(空気を悪くするだけ悪くして…、アルスのばかちん)はぁーあ…、どうしてこうなるの」 こんな気まずい空気を作って去るなんてっ、フォルックは心中で悪態。表で盛大な溜息をついたのだった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |