003
しっとりと濡れている額を手の甲で拭い、アルスは元気だと強がってみせる。
憮然とした態度を、けれども心配の色を見せるラージャはちろちろっと赤い舌を出し、アルスを見つめる。
『マジ大丈夫なのかよ、顔色悪いぜ?』
「こーんなのすぐ治るって」
「じゃあ、暫く座っておくように。少しでも不調があったら言うんだよ」
それから…、ギュナッシュは振り返ってベルトルとジランダペアに目を向けた。
「スランプかな?」ギュナッシュの問い掛けに浮かない顔を作っているジランダ。鼻を鳴らすベルトル。誰よりも【マカ】の威力が弱かったペアだった。水晶柱を合格ラインの赤に変えることもできず、最低レベルの黄の色に変色させた。まるで黄が彼等を見下しているように、派手な色を放っている。
ベルトルとジランダはクラスの中で一番できの良いペア…、普段はどのペアよりも【マカ】を上手く使いこなせるペアなのだが…、こんなにも不調だとは。
しかしギュナッシュは口先でスランプと言っていても、原因が見えていた。
溜息をついているグレイのうろこを持つドラゴンに目尻を下げる。
そして最後に、ギュナッシュはフォルックとナーガペアに目を向けた。
「君達が一番バランスがいいよ。フォルックくんも上手くマカの配分ができているし、ナーガも上手くドラ・マナを混和させられている。あとは実戦で有効に活用できればパーフェクトだね」
「だって、良かったね。ナーガ。チキンハートでもやればできるよ、僕等」
『だぎゃー。バランス型で良かったぎゃー』
フォルックは肩に乗っているホワイトドラゴンの頭を撫でる。
微笑ましい光景にうん、ギュナッシュは頷いてもう一度してみようかと皆に言う。アルスとラージャペアは休むよう付け足して。
まだ上手く立てぬアルスに手を貸しながら、ギュナッシュはフォルックとベルトルに構えを取るように指示。
ふらっとよろめくアルスはどうにか足を動かし、ラージャと共に壁側に待機。「よっこらしょ」腰を下ろすアルスは膝にラージャを乗せて、見学モードに入った。
「あーあーあ。折角マカを使えるようになったのに、まさか三回が限度なんてなぁ。ありえねぇよな、ラージャ」
頭の後ろで腕を組み、アルスはパートナードラゴンに愚痴る。
『そりゃアルスの魔法技術が低いからだろ?』
ラージャは主人に憮然と言う。
するとアルス、むっとしながらもフーンと鼻を鳴らして唇を尖らす。下手に反論はできなかった。
「低いじゃなくて不器用って言えよなー」
『ま、努力すればすぐ上がるだろ? マカだって使えるようになったし。1ヶ月待ったけどな!』
「んじゃまた1ヶ月は待たせるぜ!」
『長い! アルス、半月にしろ!』
「俺の不器用を舐めるなってラージャ!」
『そりゃ悪かった! アルスは不器用だもんな!』
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