004
『って、もっと頑張れよ!』ラージャは笑声を漏らし、「頑張ってる結果がこれだぜ、どーしよう」アルスも笑声を漏らした。
『ほんっと不器用だな!』「褒めてくれてサンクス!」此処で一拍笑声、『前向きは花丸満点!』「おう、俺の強味だぜ!」此処でまた一拍笑声、『俺ちゃまのおかげだろ!』「お前は態度のでかさに花丸満点だな!」三拍子の笑声合唱、お互いに悪ノリをかまして笑い合っている。
ギュナッシュは人知れず微笑を零す。何だかんだですっかり仲の良いペアとなったものだ。
出会いは最悪で喧嘩ばかり。最初はあんなに仲が悪かったというのに、今では腹を割り、お互いの器用不器用、実力や経験を理解し合っている。心の調和がとれているのだ。
技術面ではベルトル・ジランダペアが一番で、バランス面ではフォルック・ナーガペアが一番。アルスとラージャペアは二方に劣っているものの、心の調和と絆はどのペアよりも勝っている。
【マカ】を使えなかった期間が長かった分、代わりに絆を深めたのかもしれない。成長に繋がる良い兆しだと目で笑い、ギュナッシュは構えて合図を待っている他の生徒に改めて構えるよう指示。
一呼吸を置き「始め!」、生徒達は一斉に呪文を唱え始めた。
人間の持つ【マナ】を各々パートナードラゴンに、魔力を送る際纏い始めるオーラが目にくっきりと映る。
片方は青く、片方は赤く、オーラはドラゴンにも纏い、人間の魔力を己の【ドラ・マナ】と混和、そのまま体内に溜めた魔力を【マカ】に、パン―!
突然、風船の割れるような空気の破裂音に演習場は騒然。
片ペアのドラゴンが【マカ】を作り出す前に、耐え切れず体内で膨張したパワーを爆ぜさせてしまったのだ。自爆といえばそれで終わるが、初めて目の当たりにする事故にアルスやフォルックは瞠目するしかなく。各ドラゴンも唖然。
自爆したジランダの小さな体は後ろに大きく吹っ飛び、「ジランダ!」ベルトルが急いでパートナードラゴンに駆け寄る。
これにはドラゴンブリーダーのギュナッシュも顔色を変えた。急いで自爆したジランダのもとへ。
きゅう…、鳴いて目を回しているジランダを抱え、「しっかりしろ」声を掛けるが応答なし。どうやら気を失っているようだ。「ちょっといいかい」ギュナッシュはベルトルからジランダを受け取り、軽く容態を診る。
薄っすらと硝煙が体から漂っているものの、傷は浅いようだ。
「今日の演習は此処までにしよう。ベルトルくん、僕と一緒に保健室に。後は教室で待機しておいて」
「はーい」「待ってます」返答をしっかりと耳にしたと、ギュナッシュはジランダを抱えたままベルトルと共に保健室へと向かった。
パチクリパチクリ、アルスはフォルックと視線をかち合わせ、ついでパートナードラゴンに目を落とす。
「不調だったな」珍しいこともあるものだ、あのペアがクラス一実績優秀者だというのに。ベルトルはともかく、ジランダは心配だよな、アルスの率直な言葉にラージャは興味なさ気に相槌。
なんだ、仲間ドラゴンのことが心配ではないのか。アルスの問いにラージャは素っ気無く吐き捨てる。
『だって向こうの問題だろー? 放っとけよ。俺ちゃまとアルスの【マカ】問題みたいに、向こうも色々あるんだろーぜ。ま、ドラゴンだって完璧じゃないしな』
頼り甲斐があってもよ、俺ちゃま達ドラゴンだってまだ赤ん坊なんだぜ? こー見えてもさ。
悩みの一つや二つ、あいつにだっておかしくないっつーの。
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