016
「これを乗り切ったら、新しい職場に行ける。とても楽しみなんです。今は雑用ばかりなんですが、新しい職場では父さまと同じ仕事が出来るんですよ! 職場には父さまもいらっしゃいますし! 父さまと同じ称号天使になれて良かったです」
「ゲッ、テメェ…クソ親父と同じ職場になるのかよっ」
「昔から父さまと同じ仕事をしたいと思っていたんです。考古学とか、研究とか、環境調査とか、俺の得意分野なので。って、兄さま、そんなに嫌そうな顔しなくても。そりゃ兄さま、父さまとお顔が似てッ、いえ! 何でもありません!」
「ッ、な、つ、き!」
タブーを言ってしまい菜月は慌てて、その場から逃げ始める。
青筋を立てる螺月は「ざけんな!」と怒声を張って追い駆け始めた。足の遅い菜月は直ぐに追いつかれてしまいながらも、器用に螺月の手から逃げていた。
「そ、そんなに怒らなくても良いじゃないですか! 昔から思ってましたが、何が嫌なんですか! 父さまと似てるの!」
「ウルセェ! 次、そんな戯言を言ってみろ! テメェ、一日中恐い話を聞かせてやるからな!」
「イジメですから、それ! 大体、姉さまは母さまに似ているって言っても怒りませんよ! 兄さま、キレるところおかしくないですか?!」
「テメッ、もう許さねぇ! 張り倒す!」
「短気ー!」
「んだとチビ!」
「ち、チビじゃありません! 俺は人よりも成長が遅いだけです!」
兄弟喧嘩を始める弟たちに柚蘭は呆れながらも、本調子に戻った末弟に笑みを浮かべていた。
いつものやり取りを眺めながら思う。こんな風にこれからも3人揃って過ごせていければ良いと。年月が経っても、こんな風に過ごしていければ良い。
例えば、自分達が天使で無い種族だったとしても、こんな風に、きっときっと過ごしている。
柚蘭は満面の笑顔を作ると喧嘩している2人に歩み寄り、それぞれ腕を取り、そのまま組んだ。
「さあ帰りましょう。あ、その前に街でお買い物しましょうね」
「ね、姉さまっ、このままの状態で行くんですか!」
「ハズイだろうが! 腕、放せって!」
「仲良しこよしなのねって皆に羨ましがられるわ、きっと」
「寧ろ痛い奴等って思われる。断言できる。だから腕放せー!」
「姉さま! ちょ、勘弁して下さいよー!」
嫌がる弟たちに笑い声を上げ、柚蘭は歩き始めた。
「久しぶりに3人で夕食作りましょうね。きっと美味しい夕食になるわ。ね? 螺月、菜月」
End
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