011 恐怖が募ってくる。 3年前の、あの時の恐怖。あの時も、こうやって襲われた。恐いとコン次郎が呟き、次に小さく小さく呟いた。 「たっ……たすけて」 イタチが牙を剥いて襲い掛かってきた。 もう駄目だとコン次郎がギュッと目を瞑った時、イタチの悲鳴らしき悲鳴が聞こえてきた。 驚いてハッと目を開ければ、四つに分かれた尾が視界に映った。イタチに噛み付いているのは大きくて真っ白なキツネ。 コン次郎が顔を歪める。 「と、とーちゃっ……っ」 イタチが坤に噛み付き返し、坤から離れる。 噛まれても坤は顔色一つ変えない。 イタチが次の標的をコン太郎やコン三郎にうつそうとすれば、2人を守る為に先回りして威嚇する。 イタチは坤のことをかなり鬱陶しそうに睨んでいた。 『邪魔だ。退け』 『引け。今なら、見逃してやる』 『冗談を言うな。喰い損ねたガキ共を漸く見つけたんだ。邪魔をするな』 『喰い損ねた、だと?』 では、3年前。 自分達の留守中に棲み処を荒し、子供達を襲ったのはこのイタチなのか。 あの出来事のせいで、子供達の心身ともに傷を負わせたのは、このイタチだというのか。 人間もしくはクマに襲われていたと思っていたが、目の前のイタチに子供達は襲われたというのか。 坤の毛が逆立ち取り巻くオーラの温度が低くなっていく。 [*前へ][次へ#] [戻る] |