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004


 

 理不尽な理由で暴力を振るった聖保安部隊に菜月を預ける。そんなの赦せるわけなかった。

 感情的になる俺を宥めつつ、柚蘭も反対の意見を述べる。自分達は族長の許可を得て同居している。族長の承諾なしでは受け入れられる申し出ではないし、族長の許可が出たところで自分達が納得するような説明でなければ末弟を預けることなど不可。柚蘭は冷静に郡是隊長に告げていた。

 「分からん奴等だ」呆れる郡是隊長に、俺は分かってもらわなくて結構だと怒鳴って相手を突っぱねる。
 当事者である筈の菜月は俺達のやり取りに狼狽し、どうにか口を挟もうと頃合を見計らっている様子だったが、これは菜月の出る幕じゃない。異例子を引き取っている俺達姉弟と監視側の問題だ。
 
 結局、話は平行線のまま揉めに揉めて七日間様子見ということで事が治まる。
 
 七日間、何もなければ聖保安部隊が俺達の訴えを呑み、何か異常事態が起これば俺達が相手の訴えを呑む。
 最大且つこれ以上にない譲歩案だと郡是隊長に脅されてしまえば、この条件を呑むしかない。俺自身は何が何でも相手の主張を拒絶したかったんだが、いかんせん俺自身も四天守護家の下っ端天使。あんま我が儘を言うと公務執行妨害で法の下、罰せられる可能性がある。

 ということは七日間、何事もなく過ごせるようにと願うしかない。
 
 おかげで俺はこの七日間、非常にストレスを感じながら時間を過ごすこととなった。
 不機嫌が五倍増しになっていると朔月に苦笑いされるほど、ドドド不機嫌になっていた。しゃーない、俺は短気なんだ。周囲に対する応対もすこぶる悪かったと思う。へーへー悪いねぇ、コドモな応対で。どーせ俺は子供ですよーだ。

 柚蘭がいたらぜってぇ叱られているであろう態度を取って毎日を過ごしている一方、俺は菜月の置かれている環境を少しでも緩和しようと朔月から貰った人間界の道具を使って何か行動を起こそうと目論んでいた。
 折角、朔月がくれたわけだし、それに事あるごとに、菜月の居心地が悪くなるようじゃ向こうも息苦しいと思うんだ。聖界を好きになれなんざ言わない。けど自分の居場所は此処にあるんだって知って欲しかった。
 
 柚蘭の部屋で俺は朔月の貰った人間界の道具を見せ付けながら、「これでどうやって」菜月を喜ばせられるかなぁ、と姉に相談。
 目論みに耳を傾けていた柚蘭は、俺の相談に一笑し、「螺月が思ったとおりにしたらいいのよ」と助言にならねぇ助言をくれた。なんだそりゃ。
 
「それ、螺月が頼んで朔月に貰ったものでしょう? だったら貴方が使ってこそ意味があるのよ。菜月がどうすれば喜ぶか、それは自分で考えなきゃ。ねえ、お兄ちゃん?」

「うっわ、優しくねぇ。てめぇだって菜月の姉貴だろうが。手伝えって」

 膨れ面を作る俺に、柚蘭は変わらず笑顔のまま助言を重ねる。

「お姉さんだから見守りたい時もあるのよ。頑張りなさいね、螺月」

 マジかよ。ねぇよそれ。
 周囲からは優しいって定評のある天使だけど、弟には手厳しい鬼だぞゆらn「あらあら、鬼って誰のことかしら?」こ、心を読まれた。
 俺はなんでもねぇと冷や汗を流しながら誤魔化し笑い。人間界の道具を持ってそそくさと部屋からトンズラした。逃げるが勝ちだ。

 こうして助っ人を得ることもできず、俺は渋々自分で何をすればいいか考える羽目になる。
 自室に篭り、ベッドの上に道具を並べ、見比べて腕を組んだ。正直言って朔月のくれた手土産の使用法がどれも分からん。名前くれぇは分かるが、これはなんだっけ? 俺はゴムの塊を手にとって上下左右に伸ばしてみる。フーセンだったか? 確か。

「で、これは」

 長方形の平べったいものに目を落として眉根をひそめる。
 あー…長方形には穴が二つあいている。これは故意的らしい。カセットテープってヤツらしいが、はてさてどう使う…、ん? なんだこの黒いテープっ、ゲッ! なんか出てきたぞ?! うっわっ、元に戻らないし。
 カセットテープから出てきた黒いテープに俺は焦りを募らせ、そして…、ベッドの隅に放置。ぽーいだ、こんなの。




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