Parallel 9 「お前、猫っぽいんだよな。」 「……心外です」 むっつりと、本当に不本意そうに呟く凛に破顔し、オレはぐしゃぐしゃと髪をかきまぜる。 迷惑そうに顔を歪め、その手から逃れようとするのを、更に引き寄せ、オレは笑い声をあげながら、凛と戯れていた。 「止めて下さいってば!…ああ…頭ボサボサ…」 「可愛いからいーんじゃね?」 漸くオレの手から逃れ、髪を整えながら脱力する凛に、オレは飄々と返した。 「本気で猫扱いしないで下さい!」 怒りながら、オレを追い越した凛を、オレは上機嫌で追った。 くだらないやり取りさえ、楽しい。 お前とならきっとオレは、『オレ』として生きていける。 喜びも無く、哀しみも無く、惰性の様に繰り返される怠惰な日々。 飽いていた。同時に怖れていた。こうして、何にも興味を持てずに一生過ごして行くのかと。 欠けたまま、生きて死ぬのかと、思っていたのに。 「……りぃ!」 「……?」 呼ぶと、今まで怒っていた事も忘れたかの様に、お前は振り返る。 きょとん、と瞠られた瞳に、オレは笑い掛けた。 「何ですか、『りぃ』って。」 「ん?お前の呼び名。……野良猫は、色んな呼ばれ方するモンだぜ。」 「……まだその話続ける気ですか」 呆れた顔で、ため息をつく凛は、気付いていない。 オレの黒い思惑に。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |