Parallel
8
だが不思議と凛を煩わしいと感じた事は無い。
こうしてただ並んで歩くだけの静寂が、寧ろ心地良い。
初めての感覚だった。
出会ってまだ間もない。知ってる事など名前くらいだというのに、何故こんなにも馴染むのだろう。
まるで、欠けていた部分を得た様に。
「……なぁ、凛」
「はい?」
「暫く、オレの所に居ろ。」
「…………それは、」
凛は、戸惑った様に立ち止まった。数歩先へ進み、オレは振り返る。向かい合った凛は、迷い子のような頼りない顔をしていた。
「行く所、無ぇんだろ?」
「…………」
無言は肯定と同じと受け止める。
凛はオレの家を出ても、おそらく元住んでいた所に戻る気は無いのだと思う。
そんな奴を放っておけないなんて、偽善じみた事は言わない。これは綺麗事を装った、利己心。
「何処に行くつもりも無いなら、オレの所に居ろ。……寂しい独り者の傍に居着けよ、野良猫。」
「……野良猫?」
不思議そうに呟く凛は、意表を突かれた為か、幼く見えた。
それが余計猫みたいに見えて、思わず手を伸ばして頭を撫でる。
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