Parallel
10
結局、凛を丸め込んで、部屋につれ帰った。
何度もからかっているうちに、他人行儀な壁が取り払われた気がする。
ソファーで眠る凛は、昨日迄の様に、丸まっていなかった。
「…………」
健やかな寝息をたてる凛の髪をそっと一撫でしてから、起さない様に抱き上げた。
ソファーからベッドに移動しても、起きる気配は無い。
「…………」
暫く凛の寝顔を眺めていると、いつだかの様に携帯が震えた。
嘆息し、寝室を出る。
「……?」
ディスプレイには、またも『朱雀』の文字。
《ケルベロス》の件か。もしくは凛を何処で見たか思い出したのか。
「……何だ?」
『総長!……思い出しました。』
当たりをつけながら出ると、朱雀は珍しくも焦った様子だった。
「……何をだ。」
『総長が連れてた少年が、犬の捜し物ですわ。』
「……何?」
焦る朱雀とは反対に、オレは頭の芯が冷えていくのを感じた。
犬の捜し物。
その言葉から導き出される答えは――、
『あの子が、御門 暁良の探している人物です。』
「…………、」
オレは、愕然とした。あの男が、……生きる事に飽きたとばかりに、淀んだ目をしていたあいつが、凛の元、主人。
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