Others
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「…テメェは、月村の何処を好きになった。」
「……………。」
「アイツの何を見てきたんだよ…!!」
ガツン、と近くのソファーを蹴りとばしながら、花菱は心底悔しそうな声を吐き出した。
「…………、」
何処を、と問われれば、いくらでもあげられる。
彼と出会ってからの短い期間の中で、彼の全てを知れる筈も無いが、知っている限りの全てを、愛しく思う。
思う、のに。
その想いに偽りなど無いのに、
答える言葉に詰まる。
言い様の無い後ろめたさに襲われ、胸を張って言う事が出来ない。
「恋多き?経験豊富?…テメェはアイツからそれを聞いたのか?」
「…っ、本人に、そんな事を聞ける訳が無いだろう。…不用意に傷付けるような真似はしたくない。」
「…へぇ。」
オレの言葉に花菱は、ハッ、と鼻を鳴らすように嘲笑った。
「みっともねぇ言い訳してんじゃねぇよ。…お前は、アイツを傷付けたくなかったんじゃ無い。テメェが傷付きたくなかったんだよ。」
「…!!」
花菱は、此方を睥睨しながら、鋭く言い放つ。
視線も言葉も、真っ直ぐに鋭く、オレへと突き刺さる。
自分さえも目を逸らしていた事実を、眼前へと突き付けられた。
「月村が今までに付き合ってきたのは、中学時代に二人だけ。…しかも初めの彼女は半年で別れたから、肉体関係さえ無し。二年付き合ってた彼女と、卒業式に別れてからは、誰とも付き合ってねぇ。勿論セフレもいない。……オレらの誰よりも、純粋で健全な恋愛してると思わねぇか?」
「な………、」
花菱の言葉に、オレは呆然となる。
たった、…二人?
しかも、体を繋げたのは、たった一人だけ?
あんな華やかな、彼が。
「疑うなら、同中の奴にでも聞いてみれば?少ねぇけど、アイツのクラスメイトにもいるし。ソイツが言うには、月村は顔だけじゃなくて、彼女大切にしてるっつー面でもダントツにモテてたらしいしな。」
「………………、」
「…つか、聞かなくても、分かるだろ。月村だぞ?…アイツが、女をとっかえひっかえするように見えるか?セフレなんているように、お前には見えんのかよ。」
「っ、」
そうだ。
彼が…あんなに周りを気遣える彼が、女性の気持ちを踏み躙るような行為が出来る筈無い。
何故オレは…っ、
何故そんな簡単な事さえわからなかった…!!!
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