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「……ごめんな。凛。」



ポツリと、黒さんは、呟いた。


「忘れてた、ってのは嘘だ。…わざと黙ってた。」


その言葉に疑問は浮かんだけれど、オレは、問い詰める事はせず、はい、と先を促すように頷くだけにした。


「…言えば、お前はきっと、皆と一緒に、色々考えて祝ってくれようとするだろ?……でもオレは、オレの我が儘で、お前だけ傍にいて欲しかったんだ。」


黒さんの意外な言葉に、オレは目を瞠る。


黒さんは、自嘲するみたいに苦笑して、オレの手を引いて、再び歩きだした。



「…何もしなくていい。ただ、毎日の延長みたいに、お前がいてくれるだけで、オレは十分なんだ。」


歩きながら、黒さんは、オレの手をブラブラと揺らす。


日々の延長。


それは、凄くありふれた言葉で、格好良くも、ドラマチックでもないけれど。


オレには凄く、素敵に聞こえた。


一度失ったオレにとって、誰かと一緒に重ねる日々は、何にもかえがたい、宝物。

それが、貴方となら、尚更。



そこまで考えて、思い至る。



―――黒さん、も?


貴方も、何かを無くしたんですか?



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あきゅろす。
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