Sub 8 「…別に、お前は謝る事ねぇだろ。」 黒さんは、そう言って笑った。 「…でも、心配かけちゃったし。」 飛び出しちゃって、ごめんなさい。とペコリと頭を下げると、黒さんは、空いた方の手で、オレの髪を撫でた。 「それも、オレがいらん事言ったからだろ。」 「確かに。その点は謝りませんから。」 スッパリ言い切ると、黒さんは、目を丸くした。 そして、吹き出す。 「…そーだな。悪かった。」 クックッ、と肩を揺らしながら、黒さんは、そう言った。 笑い事にしてるけど…。 オレ、本当に傷ついたんだから。 頬を膨らまし、ジトッと睨むと、黒さんは、漸く笑いをおさめた。 「…大した事じゃない、なんて、言わないで下さい。」 「…凛。」 繋いだ手を、ぎゅうっと握ると、同じだけ強い力で、握り返してくれる。 「オレにとっては、何より一番、大切な日です。」 「!」 昨日という日が無かったら、オレは貴方に会えなかった。 この暖かさも知らないまま生きるなんて、今のオレは、怖くて、想像する事も出来ない。 黒さんは、何も言わず、オレをじっと見つめていた。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |