Sub 5 「番犬で追い立てて、主の元に追い込ませて…狩りのつもりか。」 真っ直ぐに睨み付け、糾弾しても、余裕の表情は崩れない。 愉しげに、嘲笑うばかりだ。 「…勝手に抜け出した黒猫を、捕まえるのは当然の事だろ?」 ネズミから猫に格上げ(?)されたようだが、全く嬉しくない。 ストッ 給水タンクの上から、ヒラリと降りてきた男は、ゆっくりとした足取りで、こちらに近付いてくる。 「アンタの許可をとれ、と?」 確かにオレは、寮を抜け出して此処にいる。 …だが、この男が言っているのは、そういう事じゃないだろう。 「そうだ。」 その返答に、オレは舌打ちをする。 「馬鹿馬鹿しい。…許可する気なんて、ゼロのくせに。」 オレがそう吐き捨てると、男は愉しそうな笑い声をあげた。 「よく分かっているな。」 考えるまでも無い。 この男が、オレを黒さんの元へ帰す筈がない。 それ位なら、壊す方を選ぶだろう。 ソレを男は、戯れに『愛』と呼ぶが―――。 そんなものは愛ではない。 ソレは、ただの所有欲、だ。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |