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「屋上に行けば、ある程度の位置関係は把握出来ると思うんで。また連絡します…青さん。」
『おう。』
青さんは短く返事をし、通話は終了となった。
ガチャ…キィ
屋上の扉を開けると、温い風が吹き込んできた。
夏を間近に控えた今夜は、空気も湿っていて、重苦しく感じる。
汗とベタついた空気のせいで、額に張りついた髪を無造作にかきあげると、僅かだが不快感が緩和された気がした。
ふぅ、と漸く、緩く息を吐き出した。
……その時。
「……遅かったな。」
「!?」
―――頭上から、低い美声が降ってきた。
振り返ったオレが見上げる先、貯水タンクの上に、蒼い月を背負った人影が、一つ。
風に揺れる、黒髪。
切れ長の瞳は、深海を思わせる深い藍色。
天才彫刻家が、魂をかけて作り上げた傑作品の如き、寸分違わぬ美貌の主は、薄い唇に笑みを刷く。
「待ちくたびれたぜ?」
酷薄な笑みが、嫌味な位よく似合う奴に、オレは、唾棄するように呟いた。
「待ってなくて結構だ。」
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