Main 3 ※墨田視点です。 …志藤の言葉に、俺は、数ヶ月会っていない人物を思い浮べた。 別に彼は、レアでもなんでもない。…周りの奴らは気付いていなかったが、集会にもよく参加していたし、俺のバイクの後ろにも、よく乗っていた。 勝手に『陰』という存在が一人歩きしてしまっただけ。 彼自体は、明るくて優しいごく普通の少年だ。 「…君らも、そのコを探してるって、ホント?」 「………。」 わざとらしく志藤は、俺に訊ねてくる。 「知らんな。」 俺がはっきりと否定すると、志藤は意外そうに目を瞠る。 次いで、俺の意図を探るような目になった。 「王子様の探しものは、龍の影だって聞いたけど?」 「俺の捜しものではない。…知りたいならば、本人に聞け。」 俺には関わりの無い事だ、と言い切ると、志藤は、短く嘆息する。 「…君んとこの王子様は、話が通じる相手じゃないでしょ。」 最もだ。 アイツは、常識、というものが、一切通じない。 機嫌の悪い時ならば、話し掛けた時点で襲い掛かってくる事さえある。 だが、敵に親身になってやる道理などない。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |