Main 3 「……センセ、手は?」 ブランデーグラスを握り潰すセンセは怖い。怖過ぎるが、怪我は別の話だと割り切り問うと、センセは目を瞠る。 ゆっくりとそれが弓形に細められ、センセはオレに向かって右手を広げた。 掌の親指付け根部分にガーゼ、人差し指の第二関節に絆創膏が貼られているが、その他に目立った傷は無い。ガーゼも血が滲んだ様子が無いので、大した事は無いんだろう。 「大した事無い」 「……みたいですね」 安堵の息を吐き出すオレに、センセは嬉しそうだ。 軽傷で良かったが、グラスを何個も握り潰して大した傷も無いセンセって一体……。 「……なぁ、凛ちゃん」 「……はい?」 センセの鋼鉄の掌について考えていると、名を呼ばれた。 顔を上げると、センセは真剣な顔をしている。 「……叱るつもりは、無い。お前さんがオレに話さなかったのは、オレが教師である事を慮っての判断だと思っているしな」 「…………」 センセはそう言って、苦く笑んだ。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |