Main 3 ※日下部視点です。 考えが全く読めず、私は更に言葉を重ねようとしたが、それを飲み込んだ。 …今は、気乗りしないのか、 それとも単純に、興味が失せたのか。 どちらにしても、これ以上の進言は、分不相応にあたるだろう。 役目は果たしたのだから、このまま退室しようと、口を開きかけると、決済し終えた書類を、スイ、と差し出された。 「……。」 受け取ると、男は万年筆を机に置き、長い足を組み換えた。 「…日下部。」 漸く、藍色の瞳が此方へ向けられる。 「…は。」 短く返事を返す。 「下の奴らにも伝えておけ。…もう探す必要は無いとな。」 「……了解致しました。」 …どうやら、後者だったらしい。 珍しくも、執着するものが出来たのかと思いきや、またこれだ。 …この男の興味を引き続けるものなど、この世界には存在しないんじゃなかろうか。 しかし、胸中で呆れにも近い思いを抱いている事など、おくびにも出さず、私は従順に頷いた。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |