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※西崎視点です。


名雪圭吾にアポを取ると言い出した設楽に、オレも青龍も唖然とした。言葉も無い。
だが考えてみれば、オレ達が日下部や志藤を説得するよりは余程マシな案だと思えた。


あの二人をもし引き入れるのなら、それは斎藤以外の誰にも為し得ない。
だが斎藤は、志藤らが探す人物が自分だと黙っていた事を負い目として感じている。その上、仲間を裏切らせる様な真似がアイツに出来る筈も無い。


ならば単純な消去法として、可能性があるのは名雪だけだ。


但し、方法などオレには全く浮かばなかったが。


そんなオレ達に、設楽は珍しくも苦笑を浮かべた。
設楽曰く、多少似ているからこその発想らしい。ひねくれ者の思考はひねくれ者にしか分かりませんよ、と笑った。


『今のままでは御門と凛の対決は一方的な蹂躙で終わり兼ねない。それでは面白くないと名雪は思っている筈。……そこを突けば良い』


退屈を嫌い、義理や忠義とも縁遠い名雪ならば、利害だけを見て判断出来るだろうと設楽は言う。


『……それに反論はねぇが、だからって裏切ると断言するのは早計だろ。ああいった手合いは、自分の身は危険に晒さねぇもんだ』


華やかな美貌を歪めながら冷静に諫める青龍に、設楽は引かなかった。


『その辺りは賭けの要素も多少含みますが……負ける気はありません。名雪の様な男が、蚊帳の外である今の状況を良しとしているとは思えない』


結果、設楽は賭けに勝ち、見事名雪との取り引きを成功させた。






「…………」


御門暁良は、沈黙する。
だがそれは、ほんの少しの時間だけだ。


「……っ」


苛立ちや怒気は、消え失せていた。
代わりに男は、瞳を眇めゆっくりと口角を吊り上げる。背筋が凍りそうな凄艶な微笑が、男の美貌を彩った。


「……いいだろう」


低い美声が肯定する。
哂いを混ぜた声音が、唄う様に続けた。


「此方の不手際があった様だな。特例として、設楽安史の生徒会補佐就任を認める。今期の補佐は二人……それでいいか」


それは、此方の策の勝利を認める宣言だ。
なのに何故、こんなにも落ち着かない気分になる。


愉悦が浮かぶ藍色の瞳を見ていると、重大な失態を犯した気がしてならない。
まるで、今まで微睡んでいた肉食獣を揺り起こしてしまったかの様な。


そんな、不安が頭を過った。


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あきゅろす。
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