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※西崎視点です。


突然の御門暁良の宣言に端を発した混乱は、講堂全体を巻き込みつつあった。
膨れ上がった不満は、教師連中の制止などで納められる域を超えている。


原因とも言える男は、混乱を納めようとするどころか放置していた。
感情の読めないインディゴブルーの瞳で生徒らを一瞥した後、興味を無くした様に瞳を伏せ踵を返す。


だが、


「――生徒会長」


良く通る声音が、男を呼び止めた。
騒めきが一瞬でピタリと止む。声のした方向に視線が集まった。


何時の間にか、放送機材の傍に一人の男が立っている。放送部から借り受けたのか奪ったのか、マイクを手に持って。


「質問があります」


絹糸の様なプラチナブロンドが、窓から差し込む淡い光を受けて輝く。
顔を上げた男の白皙の美貌に、息を飲む音があちこちから聞こえた。


講堂中の視線を一身に受けながらも男は微塵も動揺せず、堂々とした様で翠緑の瞳を舞台上へと向ける。
良家の子息らしい姿勢の良い立ち姿は、全くブレが無かった。


対する御門暁良は、無表情だった。深海色の瞳が凍り付く様な冷気を帯びる。
己に向けられた訳でも無い視線に、前の方に座っていた連中は気圧され身を縮めた。


「名乗る礼儀も持ち合わせていない奴に、発言を許した覚えは無い」


御門の低い声音は、恫喝した訳でも無いのに良く響いた。
しかし男は怯む様子も見せず、優雅に礼をする。


「これは失礼。……一年F組、設楽 安史と申します。以後お見知りおきを」


綺羅綺羅しい美貌に微笑みさえ浮かべる男……設楽安史の、見かけを裏切る豪胆さにオレは、ため息を吐き出した。
その厚顔さに呆れるが、今はその図太さを頼もしく思う。


「約二月前に南区の高校より転校して参りました。周りの皆さんが良くして下さるお陰で早く打ち解ける事が出来、感謝しております」


何とも白々しい口上だ。
打ち解けるなどと、よくも淀みなく言える。群がるクラスメイトらを上手く躱し、表面上の付き合いさえもしていないくせに。


「……ですが、皆さんのご厚意に甘えているばかりではいけないと気付きました。この学園により馴染む為にも、僕の方からも積極的に動かなければと」


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