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「……センセ、手は?」


ブランデーグラスを握り潰すセンセは怖い。怖過ぎるが、怪我は別の話だと割り切り問うと、センセは目を瞠る。
ゆっくりとそれが弓形に細められ、センセはオレに向かって右手を広げた。


掌の親指付け根部分にガーゼ、人差し指の第二関節に絆創膏が貼られているが、その他に目立った傷は無い。ガーゼも血が滲んだ様子が無いので、大した事は無いんだろう。


「大した事無い」

「……みたいですね」


安堵の息を吐き出すオレに、センセは嬉しそうだ。
軽傷で良かったが、グラスを何個も握り潰して大した傷も無いセンセって一体……。


「……なぁ、凛ちゃん」

「……はい?」


センセの鋼鉄の掌について考えていると、名を呼ばれた。
顔を上げると、センセは真剣な顔をしている。


「……叱るつもりは、無い。お前さんがオレに話さなかったのは、オレが教師である事を慮っての判断だと思っているしな」

「…………」


センセはそう言って、苦く笑んだ。


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