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4
「…………、」
疲れた様に自分の席に座った西崎は、長く息を吐き出した。
頬杖をついた横顔は、憮然としているが…拗ねている様にも見える。
「……にし、」
「…馬鹿らしい。」
「……西崎、」
呆れた口調でそう呟いた西崎は、もう一度ため息をつく。
「……こんな連中を威嚇したオレが、馬鹿だった。」
「え。」
数秒間をあけて、此方を向いた西崎は、眉間にシワが寄り、視線は鋭いものの…その目元は僅かに赤い。
「……此処にお前の敵はいない、と言っているんだ。」
「!」
目を丸くするオレに、西崎は視線を和らげる。
苦笑を浮かべた西崎は、怯える子供に言い聞かせる様に、繰り返した。
「こいつらは皆、お前の味方だ。」
「………、」
呆然と、周りを見回す。
手を振ってくれる奴。
野次を飛ばす奴。
西崎みたいに仏頂面で、でも一応頷く奴。
反応は様々だけれど、無視する奴は一人もいなかった。
……そんな、幸せな事って、あっていいの。
無視される覚悟を、していた。
覚悟してたって事は、お前等を信じきれてなかったって事。それなのに。
固まっているオレの後頭部を、ポン、と羽生が叩く。
見透かしたような困った顔で、暖かい笑みを浮かべた。
「…此処にいる、34人はお前の味方だよ。」
信じなさい。
偉そうに胸を張る羽生に、オレの涙腺が決壊しそうになった。
…が、その時。
「……35人、な。」
そう割り込んだ、不機嫌そうな声によって、出かかったオレの涙は引っ込んだのだった…。
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