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「…………、」


疲れた様に自分の席に座った西崎は、長く息を吐き出した。
頬杖をついた横顔は、憮然としているが…拗ねている様にも見える。


「……にし、」

「…馬鹿らしい。」

「……西崎、」


呆れた口調でそう呟いた西崎は、もう一度ため息をつく。


「……こんな連中を威嚇したオレが、馬鹿だった。」

「え。」


数秒間をあけて、此方を向いた西崎は、眉間にシワが寄り、視線は鋭いものの…その目元は僅かに赤い。


「……此処にお前の敵はいない、と言っているんだ。」

「!」


目を丸くするオレに、西崎は視線を和らげる。
苦笑を浮かべた西崎は、怯える子供に言い聞かせる様に、繰り返した。


「こいつらは皆、お前の味方だ。」

「………、」


呆然と、周りを見回す。

手を振ってくれる奴。
野次を飛ばす奴。
西崎みたいに仏頂面で、でも一応頷く奴。

反応は様々だけれど、無視する奴は一人もいなかった。


……そんな、幸せな事って、あっていいの。

無視される覚悟を、していた。
覚悟してたって事は、お前等を信じきれてなかったって事。それなのに。


固まっているオレの後頭部を、ポン、と羽生が叩く。
見透かしたような困った顔で、暖かい笑みを浮かべた。


「…此処にいる、34人はお前の味方だよ。」


信じなさい。
偉そうに胸を張る羽生に、オレの涙腺が決壊しそうになった。



…が、その時。




「……35人、な。」


そう割り込んだ、不機嫌そうな声によって、出かかったオレの涙は引っ込んだのだった…。


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