Main 4 「…………。」 暫くの間、電柱にしがみ付く蝉みたいに西崎にへばりついていたが、引き剥がされる事無く、その間ずっと西崎は、オレを宥めるように頭を撫でてくれていた。 「………。」 暖かい手と、穏やかなトーンの声に、ゆっくりとだけど、オレの頭は冷静さを取り戻してくる。 …途端、なんか恥ずかしくなってきた。 いつも素っ気ない分を取り返すように甘やかしてくれる西崎と、それに甘えてしまっている自分の図が、結構いたたまれない。 「……に、…!?」 西崎もういいよ、と声をかけようとしたが、オレは後ろからのしかかってきた重みに、目を剥く。 何事。 「……誰か忘れてねぇか。」 オレの耳のすぐ傍で、低い声が不機嫌そうに、そう呟いた。 オレを志藤家まで迎えにきてくれた武藤は、学園につくとオレを降ろし、何処かにバイクを隠しに行った。 いつの間にか戻ってきたらしいが、全く気が付かなくてゴメン。 ……つか、忘れてなんかないよ。 ほんのちょっとしか← . [*前へ][次へ#] [戻る] |