Main 孤独 オレも、怖かった。 親も、他に頼れる人もいなくて、 疎ましい、と雄弁に伝えてくる親戚らの目も、 これからの未来も、 みんなみんな、怖かった。 ただ、冷たい世界の中で、弟と繋いでいた手だけが暖かくて、それだけを守る為に、必死に生きてきたのに、 それさえ奪われたあの時の恐怖は、今でも忘れられない。 あの、足元から崩れるような絶望は――。 たった一つの役割も、居場所も奪われたオレは、この世で一番いらないモノなんじゃないかって、思った。 自分が消えても、 誰も哀しまない。 誰も困らない。 そう気付いた時のあの絶望を、この人も、恐れているんだ。 「……っ、」 「っ!?」 力のこもらない手で、それでも必死に尚久さんの手に触れる。 重ねた手が、ビクリと跳ねた。 動きを止めた彼の力が、僅かに緩む。 「…………っ、わ、かり…ます…、」 「な………、」 途切れ途切れのオレの呟きに、尚久さんは瞳を瞠った。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |