Main 2 「……いいかげんな事を……」 尚久さんは、オレを睨むが、その目には動揺が浮かぶ。 「……分かります。」 オレが繰り返した言葉に、彼の動揺は大きくなった。 一旦緩んだ力が、また込められたが、彼の動揺を如実に表す指先が、カタカタと震えている。 「君に、分かる筈無いだろうっ!!」 耳を塞ぐように、拒絶し否定する彼に、オレは泣きたくなった。 …オレも、こんな風に拒絶しか出来なかった。 あの人の手が無かったら、きっと、今も、だった。 「な、ぉ…、……っ!?」 彼を呼ぼうとしたオレの声は、途中で消えた。 彼の肩越し、キラリ、と鈍く光る何かに目を奪われる。 「…っ!!!」 ソレは、恐怖に涙を流しながらも、彼を止める為に、少女が振り上げた刄で、 さっきまで彼が持っていた携帯用ナイフか、とか場違いに考えながらも、オレは必死に首を振る。 恐怖に追い詰められた少女の、それは防衛本能なのか。 それとも必死に、オレを助けようとしてくれているのか。 分からない、でも、 ――でも、その結末は、哀しすぎる。 「やめっ、…!!」 「…っ!?」 叫んだオレにつられるように、尚久さんは振り返る。 「………、」 己へ、ナイフを振り上げる少女を見て、目を瞠った彼は、止めるでも無く、 ただ静かに、 諦めたように、 解放されたかのように、 苦く、笑んだ――。 ――ザクッ、 . [*前へ][次へ#] [戻る] |