[携帯モード] [URL送信]

Main
窮地


「っ、」
ドサッ

「「!?」」


緊迫した空気の中、オレ達の背後で、何かに躓いた音がした。


視線を向けると、入り口近くに、いつの間にか移動した撫子さんが、蹲っていた。


どうやら足の紐は外せたようだが、何かに足を引っ掛けてしまったよう。


「……逃げる気かい?撫子。」

「…っ、」


撫子さんの姿を見て、尚久さんは、スゥ、と冷徹に瞳を眇めた。

恐怖に身を竦め、撫子さんは声無き悲鳴を洩らす。


猿轡を噛んだまま、フルフルとかぶりを振った。


オレから離れた尚久さんは、ゆっくり立ち上がる。


彼女を冷たい目で見据えながら、洗練された美貌に、冷笑を浮かべた。


「…嘘は、いけないよ?撫子。」


彼女との距離を縮めようとする尚久さんを止めようと、オレも立ち上がろうとした。


「…グッ、」


しかし、殴られた腹が強烈に痛み、すぐに膝をついてしまった。


その間にも、撫子さんに近付いた尚久さんは、屈んで、彼女の頬に、手を伸ばした。


.

[*前へ][次へ#]

19/132ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!