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窮地
「っ、」
ドサッ
「「!?」」
緊迫した空気の中、オレ達の背後で、何かに躓いた音がした。
視線を向けると、入り口近くに、いつの間にか移動した撫子さんが、蹲っていた。
どうやら足の紐は外せたようだが、何かに足を引っ掛けてしまったよう。
「……逃げる気かい?撫子。」
「…っ、」
撫子さんの姿を見て、尚久さんは、スゥ、と冷徹に瞳を眇めた。
恐怖に身を竦め、撫子さんは声無き悲鳴を洩らす。
猿轡を噛んだまま、フルフルとかぶりを振った。
オレから離れた尚久さんは、ゆっくり立ち上がる。
彼女を冷たい目で見据えながら、洗練された美貌に、冷笑を浮かべた。
「…嘘は、いけないよ?撫子。」
彼女との距離を縮めようとする尚久さんを止めようと、オレも立ち上がろうとした。
「…グッ、」
しかし、殴られた腹が強烈に痛み、すぐに膝をついてしまった。
その間にも、撫子さんに近付いた尚久さんは、屈んで、彼女の頬に、手を伸ばした。
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