Main
緊迫
「…っ、て」
転がり込むように部屋に押し入ったオレは、ぶつけた肩などを庇いつつも、直ぐ様体勢を立て直した。
距離をとりつつ、室内を見回すと、その部屋は、普段使われていないようで、物置のように沢山のものが積みあがっている。
掃除もこまめにされていないようで、若干埃っぽい。
ぐるり、と頭をめぐらせていたオレは、強い視線を感じ、そちらへ視線を向ける。
「………!」
顔を上げたオレが見たものは、
手足を紐で縛られ、猿轡を噛まされ、涙の滲んだ瞳で、じっとオレを見つめる少女の、姿。
部屋の隅に重なっていた布団の上に投げ出されていた彼女は、必死な視線をオレに向けていた。
「撫子さんっ…!」
その少女は、オレたちが必死に探していた人、撫子さんだった。
明らかに、己の意志とは関係無しに拘束されている撫子さんの姿に、オレは慌てて駆け寄った。
―――ガチャ、
「…!!」
撫子さんに気をとられていたオレの背後で、やけにゆっくりと扉が閉まる音がした。
「…………困った人だ。」
「っ…、」
.
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!