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「……………。」
どうする。
どうしたら、いい?
あり得ない位、鼓動が早鐘を打つ。
握り締めた手の平に、嫌な汗が滲んできた。
もし、あそこに撫子さんがいるとしたら、
内鍵を、かけられてしまえば終わりなんじゃないか?
例え外から扉を叩いたとしても、強行されてしまえば、どうにも出来ない。
たぶん跡継ぎ問題で尚久さんが、こんな行動に出ているのならば、目的は、撫子さんと早急に結婚する事。
…で、予想だけど、撫子さんは、頷かなかったんじゃないかな。
性格上、拒否は出来ないけれど、おそらく尚久さんの望む応えは得られなかった。
そして彼はきっとこう思った。
それならば、既成事実をつくってしまえばいい、と。
…もしそうなった場合、撫子さんの気質を考えると、結婚するしかなくなる。
それに、ある程度事態がバレたとしても、婚約者同士の事だ。有耶無耶にされてしまうんじゃないか?
「……………、」
覚悟も決まらないうちに、無情にも
ガチャリ、と扉が開く音が、した。
「………っ、」
後は、あんまり覚えていない。
覚悟とか、決意とか、
正義感とか、罪悪感とか、
そんなものは、欠片も思い浮かばなかった。
言うなれば、
勝手に、体が動いた。
「……なっ!?」
彼が扉を閉める前に、無理矢理隙間から押し入ったオレは、正に後先考えてなんか、いられなかったんだ。
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