Main 2 「……………。」 どうする。 どうしたら、いい? あり得ない位、鼓動が早鐘を打つ。 握り締めた手の平に、嫌な汗が滲んできた。 もし、あそこに撫子さんがいるとしたら、 内鍵を、かけられてしまえば終わりなんじゃないか? 例え外から扉を叩いたとしても、強行されてしまえば、どうにも出来ない。 たぶん跡継ぎ問題で尚久さんが、こんな行動に出ているのならば、目的は、撫子さんと早急に結婚する事。 …で、予想だけど、撫子さんは、頷かなかったんじゃないかな。 性格上、拒否は出来ないけれど、おそらく尚久さんの望む応えは得られなかった。 そして彼はきっとこう思った。 それならば、既成事実をつくってしまえばいい、と。 …もしそうなった場合、撫子さんの気質を考えると、結婚するしかなくなる。 それに、ある程度事態がバレたとしても、婚約者同士の事だ。有耶無耶にされてしまうんじゃないか? 「……………、」 覚悟も決まらないうちに、無情にも ガチャリ、と扉が開く音が、した。 「………っ、」 後は、あんまり覚えていない。 覚悟とか、決意とか、 正義感とか、罪悪感とか、 そんなものは、欠片も思い浮かばなかった。 言うなれば、 勝手に、体が動いた。 「……なっ!?」 彼が扉を閉める前に、無理矢理隙間から押し入ったオレは、正に後先考えてなんか、いられなかったんだ。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |