Main 弟 「…弟。……そう、よね。大人びた容姿だから忘れそうになるけれど、彼まだ中学生だって言っていたし。…静君の学校の知り合いなら、君は高校生でしょうしね。」 釈然としない様子ながら、麻美さんは、そう呟いた。 …大人びた、容姿。 その言葉に、胸がズキンと痛んだ。 オレの中の咲は、3年前のまま。 背丈はオレと同じ位あったし、父親似の彫りの深い顔立ちはしていたけれど、 それでも子供らしい、無邪気な笑顔を浮かべていた、可愛い可愛い弟。 兄さん、兄さん、と 子犬のようにオレの後ろをついてきていた、愛しい弟。 いつでも、オレがあの子の一番近くにいると思っていたのに。 そして、それは、ずっと続くと信じていたのに――、 ある日突然、その手は離された。 繋がれた手は、一方的に解かれ、背を向けたあの子は、振り返る事無く去って行く。 オレを、置き去りにしたまま。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |