Main 4 …でも、何故? そんな突拍子も無い嘘をつく程、オレは胡散臭く見えるのか? 「……そう。最近、私、『紗鞠』にお世話になったのだけれど、ご子息が二人いるとは聞いていなかったわ。」 「!」 ……そうか。 しずかちゃんのお母さんと初めて会った時、『義妹がバックのプロデュースをした』って言っていた。そういえば。 注意深く聞いていれば分かる事だったのに、失念していたオレは、内心で動揺していた。 偽者じゃあるまいし。何で動揺してんのオレ、って感じだけど。 ……やましい、のかもしれない。 一方的に跳ね除けた、父の力を勝手に使っている事とか、 実家の家業とはいえ、全く関わっていない為、一般人以下の知識しか無い事とか、 あと、それから―― 「…なら、咲くんは、君の…」 ……ああ。 どれ程久しぶりに聞いただろう。 その名を。 ――――さき。 咲。 幼かった彼の手を離して、3年の年月がたった。 以来、一目たりとも会っていない彼の名に、泣きそうな心を押し留め、オレは笑った。 「…弟、です。」 . [*前へ][次へ#] [戻る] |