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…家元の妹、で
北條ってことは。
もしかしなくとも、
「…桜子さんと撫子さんの…?」
「母ですわ。」
やっぱり。
良く見ると顔も雰囲気も、桜子さんに良く似てる。
「はじめまして。斉藤 凛です。」
ぼんやり考えていたオレは、差し出されたままの手に気付き、慌てて自己紹介しながらその手を握り返した。
手を離した後も、黒目がちな瞳が、オレを真っ直ぐに見つめている。
……?
何かを探るような目にオレが戸惑いを感じていると、麻美さんは、おもむろに口を開いた。
「…義姉さんから聞いたのだけれど、斉藤君が『紗鞠』のご子息というのは、本当かしら?」
「!」
…ここでその名が出てくるのか。
「…はい。」
頷いたオレを、麻美さんは注意深く見る。
まるでおかしな点を一つたりとも見逃さないとでも言うように。
…ここまであからさまだと、流石に鈍いオレでも分かる。
……疑われているんだろう。
本当にオレが、『紗鞠』の人間であるかどうかを。
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