Main 3 「…はじめまして。主の代理で参りました。日下部京一と申します。」 慇懃な態度を崩さない日下部先輩に、尚久さんは、苦笑しながら、よろしく、と返した。 「僕はこれで失礼しますが、お二人とも、ゆっくりなさってくださいね。」 尚久さんは、オレ達にそう言うと、撫子さんを連れて去っていった。 撫子さんは一度だけ、何か言いたげにしずかちゃんを見たが、力なく俯いて、尚久さんに逆らう事はなかった。 「……………。」 二人が消えた方向を、しずかちゃんはじっと見ている。 撫子さんを気にしているんだろう。 尚久さんが、乱暴な扱いをするとも思えないが、さっきの彼女の様子を見ていると、会ったばかりのオレでさえ心配になるんだから、幼なじみであるしずかちゃんは、尚更だろうな。 「…………ごめん、二人とも。先戻っててもらえる?」 躊躇っていた彼は、振り切るように顔をあげ、オレらにそう言葉をかけると、撫子さんらの後を追うように駆けて行った。 ヒラヒラと手を振って見送りながら、オレは思う。 ……泥沼展開にならなきゃいいけど。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |