Main 2 日下部先輩は、しずかちゃんみたいに怯んだりはしなかった。 でもオレは、日下部先輩を見上げるように睨む。 「…日下部先輩もです!」 「…………。」 「先に食って掛かったのはしずかちゃんとはいえ、煽るような真似しないで下さいっ!こんな人様の家の廊下で殴り合いだなんてあり得ないです!!」 興奮しすぎて顔を赤くしているオレを、日下部先輩は、困ったような顔で見る。 「…聞いてますっ?」 オレが噛み付くと、日下部先輩は益々困ったような顔で、オレの目尻を指で撫でた。 滲んでいた涙が、彼の指の腹に掬われる。 「…分かった。……私が悪かったから、そんな顔で見ないでくれ。」 困り切った声音で、先輩はオレから目を逸らした。 「………どうせ変な顔ですよ。」 オレは子供みたいな癇癪を起こした事が恥ずかしくて、拗ねたように呟き、袖口で滲んだ涙を拭う。 「…変な顔だったら、こんなには困らない。」 先輩は口元を右手で覆い、ポツリと呟いた。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |