Main キレた キレたオレは、肩で息を整えながら、涙目になりそうになるのを堪えていた。 「……だ、だって、」 オレに睨み付けられ、怯みつつも弁解しようとするしずかちゃんを、オレは遮る。 「ど・こ・だ・と、思ってるのかって聞いてるの!!」 「…っ!!」 しずかちゃんはキラキラしい美貌を情けなく歪めて、大きな体を竦め、『オレん家です…』と小さく呟く。 「…しずかちゃん家は、華道の家元なんでしょう?こんな私事で、廊下で喧嘩なんかしていいと思ってる?」 「……………、」 「…返事は?」 「…お、思ってませんっ!」 さっきまで狂犬…というか狼のように牙を剥いていた面影は、影も形もない。 すっかり、叱られて耳をへたらせ尻尾を巻いたワンコの如く、シュンとなってしまったしずかちゃんに、オレは少しだけ溜飲が下がった。 でも、まだです。 喧嘩両成敗だかんね! そう決意しオレは、今度は日下部先輩を見た。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |